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病める時も健やかなる時も

ふわ、と真っ白なドレスが揺れるのを横目で見ていた。
ところどころにあしらわれた真珠が太陽の光にきらきらと輝いて
今日という、素晴らしい日を手元の鮮やかな花々と共に祝っているようだった。

彼の病気が見つかったのは、今から六年前のことだ。
野球部のエースピッチャーとして来たる夏に向け日々鍛練を積んでいた彼の
異常に最初に気づいたのは、小学生の頃からずっとバッテリーを組んでいた俺だった。
そのまますぐに入院することになり、ついに彼がマウンドに立つことは無かった。
最後の夏だった。
高校を卒業したあとも彼の闘病生活は続き、退院してはまた入院を繰り返していた。
一番の親友でもあったし、なにより同じ病で父を亡くしていた俺は定職にも就かずに
ひたすら彼の病室に足を運び、共働きの彼の両親の代わりに身の回りの世話を焼いた。
病気のせいで次第に卑屈になる彼を慰み、時にはぶつけ様のない感情の捌け口にも
なったりした。暇があれば彼のために動き、暇がなくても彼のことを想っていた。
だから病気が完治し、退院することになった彼の涙ときつい抱擁には心底嬉しかったし
もうこれ以上のものは要らない、とさえ思った。だけど。それでも。

聖歌隊の演奏にあわせ一歩ずつバージンロードを進んでいた花嫁がようやく祭壇に到着し
花婿、彼が優しく微笑んで、ベールに包まれた彼女の顔を見つめる。
俺が彼と過ごした時のほんの三分の一ほどしか一緒にいないのに、今日彼との
永遠の時間を約束するのは彼女で、俺は友人の中の1人でしかない。
病める時も健やかなる時もいつだって一緒にいたのは、いれるのは俺だけのはずなのに。
だけど、たとえ彼が他の誰かと愛を誓っても、俺はこれから先ずっと彼のそばにいて、
ただの友達としてだっていい、守っていかなければならないのだ。

二人だけの病室、今日と同じ太陽の光が眠る彼の顔に降り注いだ午後。
いつもそばでお前の幸せを守る、と神に誓って、証しのキスをしたのだから。