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来るの遅過ぎだよ

黒く縁どられた彼の顔は見たこともないほどの満面の笑みを浮かべていた。
陸上部のユニフォームを着てるから、きっと大会かなんかのとき撮ったんだろう。
ああ、そういえば。あいつは陸上部だったっけ。

友達と知り合いの中間、俺達の関係を言葉にするとしたらそんな感じで
話したことはあってもアドレスなんて知らないし、ふたりきりになったらまず間違いなく沈黙。
だから昨日急に俺んちにやってきた時だって冷静に考えてみればなんで場所知ってんだよ
て感じなんだけど、とにかくそのときはうわ、なに話そう…そればっかり考えてて。
だから宿題のことだのクラスの女子のことだの色々頭をめぐらせている俺の腕を掴んで
スキって言ったかと思えばたちまちキスしてくるなんてことはまったくの予想外な上に
そんな状況で俺の身体は拒否するどころか縋るようにあいつに抱きついて、俺も。
なんてあがる息と一緒につぶやいたりするなんて思いもよらなかった。
だけどそのままベッドに崩れこんで、息が止まるくらいきつく抱きしめられたら
こうなることはきっとずっと前から決まっていたんだ、なんて確信したりしたけれど。

着信音で目を覚ましたとき一番に見えたのはあいつの寝顔だったはずなのに
携帯を手に取ったときにはそこにしわくちゃの布団しか無かった。
そりゃそうだ。だってあの時あいつがいたのは俺の部屋のベッドじゃなかったのだから。
でもだったらなんで、わざわざ俺のところへなんか来たんだよ。
いくまえにもっとしなくちゃいけないことが他にあるだろう。
両親に伝えることとか友達に言っとくこととか沢山あるだろう。
俺の身体にあとをつけたり布団にしわを作ったりして何になるんだ。
もしも来なかったらお前の事なんか一年後にはきれいさっぱり忘れられてたかもしれないのに。
ああもう、そんなに笑うなよ。泣きたくたって泣けないだろ。