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呆然

「な、何言ってるんですか?」
空く間。思わず止まる手元。
「だから、俺はお前が好きだと言っている」
ワンテンポ遅れて手元の猪口が落ち、残っていた酒が足にかかる。
はっとした。
「いやいやいや、からかっちゃいけませんて!」
目の前の青年がぐらりと揺れたのは自身の酔いのせいか。
伸ばされた手がゆらゆら揺れながら自分の顎を掴む。
「俺は本気だ」
「よ、よよよ酔ってるんですよ!」
顔が逃げてしまう。まずい。
自分にとっては大切な人だから、あからさまに避けるなんてことしたくなかったけれど、
だからと言って近づいてくる唇を素直に受け入れる訳にはいかない。
「わ、私こんなんでも男ですから」
「知っている」
「あ、あなただって男じゃないですか」
「当然だ」
「わ、私…私……」

「あ」

もう少しで抱き締めることが出来たはずの体が急にくてんとなって、そのまま崩れた。
両腕で支えてやる。
肩に乗った彼の寝息が小さく耳に届いてくる。
「……。大物め」
酒に弱いとはいっても、すぐ眠くなるとは言っても、
まさかこのタイミングで寝るとは思わなかった。
「まあ、仕方ないか…」
自分だって、酒にでも酔わなければ言えないのだ。
けれど。
腕の中で寝る可愛い人を、胸に残るもやもやと共に抱いて、青年はぼうっと座っていた。