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王子様

「これはないわ」
山下が盛大に噴き出したので、何事かと俺はテレビに視線を向けた。
テレビに映っていたのは流れる汗さえ爽やかな甲子園球児。ちなみに俺らと同い年。
どこが噴き出すほど面白いのかわからない。
「何が?」
「はなわ似王子だって。すげーかわいそ」
そう言いながらも、まだ笑いが収まらないらしくニヤニヤしている。
ふーん、と俺は雑誌に視線を戻したふりをして、山下の顔を盗み見る。
中3のときに肩を壊して山下は野球をやめた。引退試合の直前だった。
いくつも来るはずだった推薦の話は全部なくなった。
もともと成績も良かった山下は普通に受験して普通にそこそこの高校に入った。
けど、野球関係の知り合いを避けるようになった。同じ野球部だった奴だけじゃなくて、
クラブチームに入って野球してた奴とか全員。
俺は山下に切り捨てられたくなかったから、山下と一緒に入った野球部をやめた。
それから三年、俺は山下の前で野球に関する話を一切しなかった。
「俺絶対甲子園行きたいんだよね」
たまに俺は中3の春、山下と一緒に高校野球の中継を見ていたときの夢を見る。
やっぱ甲子園は夏だ、とも山下は言っていた。その年の夏、俺たちは高校野球なんて見なかった。
それからも毎年夏はだらだら一緒に過ごしたけれど、俺たちが一緒に高校野球を見ることはなかった。
高校入ってから2回夏が来て、そのたびに山下はあんまり笑わなくなって、俺は憂鬱で、
テレビも新聞も全部なくなればいいのにと思っていた。

3回目の夏、山下が甲子園のニュースを見て笑っている!
俺は佐賀の王子様に本当に本当に感謝した。