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死に際に告白しようとするが結局出来ないで死ぬ

死に際に最後の力を振り絞ったらしい小っこい悪魔が憎たらしい笑顔で放った氷柱
それが自分の腹を突き破った時、一瞬本当に何が起きたか分からなかった。
オレは悪魔を倒したジンに向けていた笑顔のまま、ガクンと膝から崩れ落ちる。
尻餅をついた衝撃で視線を下ろした先に見えるのは
体に深く突き刺さる氷柱とそれに纏わり付くように滲む血。
氷柱が刺さっている部分から根を張るように体が凍っていくのが分かる
これから自分は死ぬのだ、と本能が泣き叫んでいる気までしてきた。
「ソロ!!」
「……かはッ! ……ッ! ……!!」
血相を変えてオレを抱きかかえるジンに何か言ってやりたかったが
さっき悪魔に掛けられた沈黙の効果がまだ残っているせいで悲鳴すら出せない。

抱えたオレを見下ろすジンの顔は、普段の無表情っぷりが嘘のように歪んでいて
ただでさえ白い肌が真っ青に染まっていくのはいっそ痛々しかった。
「しっかりしろ! こんな物すぐ抜いてやるから!」
氷柱の刺さった傷痕が凍り始めているのに気が付いたのか
ジンは自分の手まで凍り始めるのも気にせず氷柱を抜こうとしてくれている。
だが悪魔の全魔力が詰まっている氷柱はきっと抜けやしないだろう
これ以上何をしてもジンの手が傷ついていくだけだ。
「……ッ、……ァッ!」
そう言おうとしてもオレの喉は何の音も出さない
だから、まだなんとか動く腕でジンの手を繋いで止めた。
ジンの手は泣きたくなるほど暖かくて出せる限りの全力で握った。

「ソロッ……!」
もうどうしようもない事を悟ったのか、ジンはただ単純にオレの体を抱き寄せた
太陽の匂いがする暖かい体に包まれて堪え切れなくなった涙が次々溢れ出す。
オレの顔を覗き込むジンに向かって声の出ない口で精一杯の想いを伝えた。
ヘタレなオレにはずっと伝えられなくて、鈍いジンは全然気づいてくれなかった
たった二文字を、壊れたおもちゃのように、繰り返し、繰り返し。
鈍いコイツにはきっと読み取れないだろう告白を
オレはずっと、多分意識が闇の淵へ落ちた後も、言い続けていた。

相手の声帯を一時的に潰す事によって魔法を封じるという
危険極まりない能力を持つあの悪魔は確かに俺が切って捨てた筈だった。
だが今紛れもなく俺のパートナーは、俺の目の前で異物を腹に受け、地に伏せた。
「ソロ!!」
「……かはッ! ……ッ! ……!!」
今度こそ本当に死に絶えた悪魔を踏みつぶして俺はソロの元へ駆け寄る。
力なく座りこむ体を抱えると、悪魔の手によって無理矢理
沈黙状態に陥らされた彼の口は音もなくパクパクと開閉した。
ソロの腹部ほとんどを埋め尽くすようにして突き刺さっている氷柱は
ソロの血を纏ってヌラヌラと妖しく光り
氷柱に占められた肌は傷口を覆うように凍りつき始めていた。

おそらく内部も同じように凍り始めているのだろう
中から凍らされていく姿を想像して、思わず背筋に悪寒が走った。
「しっかりしろ! こんな物すぐ抜いてやるから!」
ヒューヒューと次第に弱々しくなっていくソロの呼吸音を耳に氷柱を掴みながら叫ぶ。
余程膨大な魔力が篭っているのか、氷柱は俺の手まで凍らせ始めたが
気にせずありったけの力を込めた。出来れば砕き、砕けなければ抜く。
「……ッ、……ァッ!」
だがソロはそんな俺を咎めるように手を重ねそして優しく握った。
驚いて覗きこんだソロの顔は、全てを受け入れたような諦めたようなそんな顔で
俺は"彼はこれ以上俺にどうする事も望んでいないのだ"という事を悟った。

「ソロッ……!」
張り裂けそうな感情を胸の内に押し込み、ただソロを抱き寄せる
ソロはふっと一度笑い、そして音も無く静かに泣きだした。
パクパクと何度も口を動かして何か伝えようとしているみたいだったが
涙でぼやけた視界では、それが何を意味しているのか掴み取れない。
「俺と、俺とずっと共に……!」
『居てくれ』とそこまで続けることは出来なかった。
俺の無力な腕の中、完全に温度を無くしたソロは、
きっともうどんな言葉も聞いてくれやしないだろうから。