天才×秀才
勝手な理由なんだ。僕がお前を構う理由なんて。
遠巻きに見て噂するような、僕のどうでもいいことばかりを神格化してしまう、そんな
奴等と違ってお前は僕を真っ直ぐに見つめるから。
天才なんていうどうでもいいレッテルをお前は気にすることはない。
嫉妬や羨望の入り交じった瞳が僕を見て、それが逸らされる事がないと確信できる。
そんな相手は、お前だけ。
だから僕は、そんなお前を好きなんだ。
いつからだろう。追い掛けられるだけでなく、隣に並んで欲しいと思うようになったのは。
お前はいつも眉間に皺を寄せて難しそうな顔をしているけれど、僕が小突くように額を突
くと、驚いたような顔をして。
無防備な顔で僕を見返すから、それがおかしくて。
ライバル? 目標? そんなのどうでもいい。ただお前が迷わずに僕を追い掛けて、
そしてその手を掴めればいい。
「どうして……。あんたは、俺なんか気にするんだ?」
逆に問いたいよ。どうしてお前は僕をそんなに必死に追い掛けてくれるのかい?
ただ僕はその瞳を独占したいから。
強引なくらい、強欲なくらいにずっと僕を見ていて欲しいと思うから。
だから思うんだよ。
「いつか、隣に並んでくれるだろう?」
それは祈りのように。
君がくれるその熱をずっと閉じこめていたいんだ。だから僕はその手を捕まえて……。
そして抱きしめる。隣にある存在を、確かめるように。
最終更新:2009年04月13日 15:02