人間×触手

※微グロ、変態プレイ注意



夕餉の膳を下げに来た女中の足音が十分に遠ざかったのを確かめると、立ち上がって部屋の隅へと向かう。
使用人には決して手を触れぬようにと言い含めてある鍵のかかった箱の中には、私が育てている盆栽の中で最も大切にしている一鉢がしまってある。
鍵を開けるために顔を近づけると、ほのかに甘い香りが鼻孔をくすぐる。箱を開けるとその香りはくらりと目眩がするほどに強くなる。
慣れているはずの私を酔わせるほどに香るのは花ではない。花というのにはあまりにも艶めかしすぎるそれは、まるで人の粘膜のように赤く濡れた蔓。茶色い幹から幾本も伸びた触手状のそれらは、まるで私の姿を認めて喜んでいるかのようにうねうねと蠢いている。

日の差さぬ山奥に生え、その甘い香りで牡の獣――時には人間の男を誘い、その精を搾り取るという妖樹を見ることが出来るならば、食われても構わないと思っていた。
けれどもあるいは単なる噂話に過ぎないかもしれないと思っていたそれを実際に目にした時、私はこの希少な樹木を自分の手で育ててみたいという欲求に抗うことが出来なかった。
襲い来る蔓を刀で切り払いつつ、どうにか持ち帰ることが出来た一本の若木は、山の中とは大きく違う環境で無事に育つのかという私の心配をよそに、盆栽と同じ鉢の中で少しずつではあるが成長していた。
「待たせたな」
声を掛けて手を差し出してやると、一本の蔓がしゅるりと伸びて甘えるかのように私の指先に絡みついた。
同時に他の蔓も一斉に私の方へと伸び、遠慮がちに体に触れる。
そのうちの一本が袴の隙間から着物の中に入りこもうとするのを見とがめて「こら」と叱れば、その蔓は慌てて着物の中から出て、反省するかのようにくたりとうなだれた。
「いい子だ。そうやっておとなしくしていれば餌をやるからな」
山から持ち帰ったばかりの頃は、私の口や男のものの先端や後孔といった粘膜を狙って、蔓の先から出る樹液で私を酔わせて襲おうとしていた。
それを退けてそのたびに餌を絶って飢えさせ、代わりにおとなしくしていればたっぷりと餌を与えてやるようにしたところ、犬畜生程度の知性はあるらしい妖樹は私を襲うのをやめ、こうして餌を与えられるおとなしく待つようになった。

あまり焦らすのもかわいそうだと思い、私はさっそく餌を与えることにした。
鉢植えの前にどっかりと腰を下ろし、袴と下帯を緩めて中から己のものを取り出す。
途端に蔓が待ち遠しいとでもいうように一斉にゆらりと揺れる。
兆し始めている己のものを左手で擦り始めた私をせかすかように、蔓が私の肌を優しく撫でる。
それでも先ほど叱られたのに懲りているらしく、男のものや後孔には触れようとしない。
従順なその蔓を、私は開いた手で愛おしむように一本ずつ撫でてやる。
やがて小さく胴震いをして、私は白いものを妖樹に向かって吐き出した。
じゅるじゅると音を立ててそれをうまそうに啜る蔓のために、私は最後の一滴までを手の中に絞り出して差し出してやる。
「うまいか」
問いかけると蔓は感に堪えないといった様子でぷるぷると震えた。
「そうか、そんなに喜ばれると私も餌のやり甲斐があるな」
どうせ家の跡を継ぐことも、他家への養子や婿入りの口もない冷や飯食らいの八男坊だ。
子をなすという本来の役には立ちそうもない無駄な精をここまで喜ばれると、相手が人ではなくても嬉しくなってくる。
「せっかくなら、お前の中に種付けしてやれればいいのだがな」
益体もないことだと思いつつぽつりとつぶやくと、一本の蔓がするりと頬を撫でた。
「そうか、お前もそう思うか」
己の都合の良いように解釈して伸びてきた蔓を撫でてやると、その蔓がいつもとは少し違う香りを放ったような気がした。


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最終更新:2013年08月08日 23:02