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前世で刺し違えた宿敵同士、現世で再会

「だから!俺たちは前世では宿敵だったんだって!こんなにわかりやすく言ってるのに何でわかんないの?!」
「おーけー。ひとまず日本語話そう。な?」
目の前で両手を握りしめ、30分前から延々前世がどうのこうのと騒ぐ相手の目を見ずにどうやったらここから逃げれるのかを考えながら、ひとまず落ち着くよう促してみた。
彼が言うには、自分達は前世では二人に並ぶ者はいないとされるくらい勇猛果敢な戦士であり、また実力が拮抗していたため宿敵同士だったそうだ。
王国だかなんだかに仕えていた自分と彼だが、跡継ぎ争いが起こり、王子派についた自分とそれに敵対する王弟派についた彼は自分たちの主のために戦い、差し違えて死んでしまったそうだ。何の運命のいたずらかまた現世で巡り逢ってしまった。これは運命だ!
そう初対面で言われた自分が思ったことはただ一つ。そんなことを真顔で言って恥ずかしい思いをするのは自分自身なんだということ。
「こんだけわかりやすい日本語もないと思うんだけど?!」
でかい図体の人間が地団駄を踏むな。床が抜けそうだ。
これが自分と無関係な人間なら、頭がちょっとあれな感じなんだなと憐れみの目を向け、二度と会う事がないようにするが今回はそうもいかない。
母の再婚相手の息子、つまり義弟になるはずの彼がこんななのはどうなんだ。自分は母の再婚を止めるべきなんだろうか。
今日初めて会う母の再婚相手は母と二人『この子はちょっと個性的な子でねー』と微笑んでいる。
個性的ですまされる問題じゃない。
「前世ではろくに話すこともできなかったけど……でも今世では兄弟になれるってすごいことだと思わない?」
母の再婚相手の家で、彼とはソファを挟んで向かい合わせに座っていたはずなのにいつの間にか隣に座りせっせと熱弁を振るっていた。
今は中学生だからそんな浮かれた妄想を話せるがあと5年もして今の自分と同い年になったときにこんなことを言ったことを深く後悔する。経験談だ。
しかし逆に言えば、今の彼にとってはそれは微塵も後悔することを言っているわけではなく本気で言っているのだろう。
否定されればされるほどムキになるに違いない。
この年頃は負けん気強いからな……そんなことを思いながら、彼と目を合わせた。
「わかった、お前の言うとおりなのかもしれないな。俺には前世の記憶がないから、嘘だとも本当だとも言えない」
口を引きつらせながら思ってもないことを言ってみる。これで彼が引くだろうと思った。
案の定肯定されたことに彼は瞳を輝かせた。
「やっとわかってくれた?良かったぁ」
言葉と共にぎゅ、と抱きしめられた。なぜ。
男に抱きしめられても一切嬉しくない。それどころか鳥肌がたちそうだ。
「……しゅくてき、じゃなかったのか」
喉から絞り出した声に彼はパっと身体を離した。心なしか頬が染まってるような気がする。
「宿敵だったけど、でもすごくすごく気になってて、ていうかむしろ宿敵だからそれを言えなくて……」
もじもじとしながらも、どうやら彼は前世の自分のことを好いていたらしいことを告げられた。
「一緒に死ねたのはすごく嬉しかったし、また会えて嬉しい」
再度抱きしめようとするのを蹴り飛ばし、隣でのほほんと『仲良くなれそうで良かったわ』と笑い合う母とその再婚相手には、この結婚はやめた方が良いという言葉は届かなかった。


一緒に暮らすようになり、毎晩人の布団に潜り込む彼を蹴り飛ばすことが自分の日課になるとわかっていたら何がなんでも再婚をやめさせていたのにと、今日も彼を布団から追い出しながら思った。