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微グロ電波注意

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いつか、大切な人と、ずっと一緒に暮らせるといい。


僕はずっと一人で旅をして来た。死んだ弟を生き返らせる方法を探して。
旅は十の時から始まり、どこにあるとも分からないその方法を追い求めて、
大陸中を巡ってもう18年も経った。弟は既にあの家で腐り、骨になっている事だろう。
それでも僕は旅をやめる事はできなかった。

旅の途中、色々な人と出会い、別れた。辛くないと言えば嘘になるが、
それでも目的の為には仕方がないのだと諦め続けていた。
だけどひとつだけ、どうしても離れがたいものができてしまったのだ。

「ずっとこの村にいてよ」

そう語る彼の面差しは、死んだ弟に似ていて。もし彼が大人になったら
こんな優しそうな、そして頼りがいのある男になっていたに違いないと思った。

「言いたくないならなにも言わなくていい。全部俺が抱きしめてあげる」

暖かい腕に包まれて、僕は身を預ける。暖かさが凍らせていた僕の心も溶かす。
このままこうして彼の物になり、ずっと一緒にいられたらどんなに幸せだろうか。
「それもいいな…」
そんな事が出来る訳はないのだけれど。
了承とも取れるような頷きを返すと、彼は陽の光のように笑った。
その笑顔が、よく笑っていた弟の笑顔と重なった。

まだ夜も明けきらぬ時刻に旅支度を済ませると、僕は彼の家の扉を静かに開けた。
眠る彼に近づくと、手に握った鉈を一気に振り下ろす。
ごつ、という骨に当たる音がして斬れた首が跳ねると血が噴き出した。
はずみでころころと転がった首がちょうど僕の方を向いて止まり、
一瞬視線が合って驚いた顔をした…ように見えたが、気のせいだろう。
やがて吹き出た血は勢いをなくして止まり、辺りに静寂が戻った。

僕はいつもそうだ。大切なものを無くさないと分からない。
大切かどうかを、無くして確かめてみたいという欲求に抗えない。
彼は本当に大切な人だったんだ。それが今ようやく分かったのに、もう彼はいない。
あんなに大切だった弟も、もういないのに。

握ったままだった鉈を部屋の隅に立てかけると、旅用の杖を手に持つ。
きっと僕は今返り血で真っ赤になっているだろう。それでもまだ暗い夜道なら
少しは先に歩いて行けるかも知れない。死んだ人を生き返らせる方法に近づけるかも知れない。
そう思いながら彼の家を出ると、空にひときわ大きく輝く星が見える。
その星はまるで道標の様に、僕の行く先を指し示している様に思えて、その方向へ歩き出した。

いつか、大切な人と、ずっと一緒に暮らせるといい――
そう願いながら。