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マッドサイエンティストに振り回される人

 いや、さ。
 俺はアンタの研究や、研究に打ち込む情熱を批難するつもりはねぇんだよ。
 研究に打ち込み始めると他の事に全く気付かないってのも、許す。
 俺だって剣の修行にのめりこんでた時機はそうだった。精神集中、ただ一点を見つめて剣を振る。強くなる為なら、飯も食わずに修行をした。
 だからアンタが、俺の作った飯や珈琲を無視しようが、かけた言葉を聞き流そうが、気にしてねぇ。
 ――全裸でアンタを誘ったのに見向きすらされなかった時は、少し殺意を覚えたがな。
 怒ってねえよ。昔の話だろ?
 あん時はまだ付き合い始めて直ぐの頃だったからな。俺も焦ってたんだよ。
 今は、アンタがそういう奴だって知ってる。腹立てる方が馬鹿馬鹿しい。
 一週間、いや一ヶ月、放って置かれても気にはしねえさ。

 俺は、アンタの研究を応援したい。
 アンタのやってる研究に、俺達は何度も助けられてもきた。アンタの頭脳を、俺は買っている。それは確かだ。
 望むなら実験台にだってなってやるよ。いつも、そう言ってるだろ?

 俺は我慢強い方だと自分では思ってる。
 ――けどな。ものには限度ってもんがある。
 俺にもな、堪忍袋の緒が切れる事があんだよ。

「そろそろ研究が終わるっていうから来てやったのに、随分と楽しそうだな――アンタ」
 運んできた夜食が、落ちて床に衝突した。気にせず俺は、その柔らかなパンを踏み潰す。
 眼鏡をかけた髭面の男が、こちらを恐れるように見上げていた。
 男は仰向けの状態で、ベッドの上に転がっていた。白衣を脱ぎ捨てた男の腰には、良く見知った顔をもつ男が腰をかけている。
 俺は――その男の顔を一瞥する。幸せそうな表情に、俺は吐き気すら覚えた。
「いや、あの――だな。今、行なってる研究が案外上手くいってしまって、だな……」
 しどろもどろに、仰向けの男が答える。起き上がろう、とした瞬間に腰に座った男が甘い声を上げた。
 耳に入った声に、俺は思わず眉間に皺を寄せ、耳を塞ぐ。
「アンタが今行なってる研究は、レプリカ作りだったよな? 兵力増強のために、人間の複製みてえな生体兵器を作る。それがアンタが上から頼まれたものだったよな?」
「そう、です」

 ――そんな兵器が、なんでアンタの腰の上で喘いだりしてんだよ。
 しかも、だ。
 俺と全く同じ姿形で!

「もう一回、言ってやろうか。『本物の恋人』を1ヶ月も放置しておいて――アンタは今、何をしてやがる」
「え、いや、ええっと――研究の最終仕上げとして、内部まで人間と同じかどうかを確かめてた――ってのは、駄目……」
「駄目に決まってんだろ!」
 溜まってんならそれでもいい。俺だって1ヶ月――アンタに何度触れたいと思ったことか。
 どれだけ我慢してきたと思ってる。それを勝手に、『俺の複製品』を使って抜きやがって、テメェ!

 ずかずかと大股で研究室へ入り込み、恍惚な表情を浮かべたままの『俺の複製品』を男から引き剥がす。
 その勢いのまま、男の肩を掴んで、ベッドに押し倒した。――男は驚いたように目をぱちりと瞬かせる。

「覚悟しろよ。今日という今日は、許さねえ」
「え、あの、ちょっ……何を……」
「ケツ貸せ。アンタの中に突っ込んでやる」
「ま、待った! それだけは――」

 何時もはアンタを思って突っ込まれる方に甘んじてやってたが、今日という今日は許さねえ。
 俺が、アンタに突っ込んでやる。泣き喚いたって許さねえ。 
 ――別れるとか言い出さないだけ良いと思え、この、イカレ研究者。