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まわし

「ねぇ、本当に行ってしまうの?」
狭間の場所まで追いかけてきて、其れは無いだろう。
分かっている癖に、お前は最後まで俺を困らせるんだな。
「ごめん、だけど俺は行くんだ」
枯れた風に揺れる髪を撫でると大きな瞳が少し潤んだ。
ぐっと惹かれるのを堪え、俺はなんとか笑みを浮かべる。
「どうして。キミは寂しくないの?時間の守人なんて悲しくないの?」
俺の仕事、時間の守人は一つの時代に一定の時間しかいられない。
寂しくない、悲しくないと言えば大嘘になる。
今ほど心惹かれる時代は長く勤めてきた中でも一番だろう。
けれど、俺はゆっくりと首を左右に振った。
「……そっか、キミにとってはボクも時間の欠片でしか無いんだね」
潤んだ瞳の端に涙が滲んでいる。
抱きしめたい。
けど、もう行かなくちゃ。
「さよなら」
俺はお前を忘れないよ、と心の中で大きく叫んだ。
俺の指先が小さな光を放ち、お前の記憶を消し去っていく。
それと同時に俺の姿も透き通り、次の時代へと時間が進んでいく。
「大好きだ……」
手を伸ばしてお前を抱きしめようとした。
なのに回りだした時間は残酷にも手が届く前に俺を連れて行く。
「誰か、呼んだ?」
不意にお前は空を見上げて問いかける。
俺はもう、お前に話しかけることも笑いかけることもしてはやれない。

時間よ、回れ。
優しいあいつに、新しい出会いを運んでいけ。
俺に出来るのは、世界のために時間を回すことだけだから。