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本当の顔を知らない

財布を拾ってくれた君は、小さな顔には不似合いな大きなマスクをしていたね。
昔からの気性なのか、不信感を抱かない素直で優しい君は、お礼をしたいと言っても全く受け取ろうとしなかった。
…今思えば、ご飯でもなんてなったらマスクを取らなきゃならないもんね。うん。

それから、連絡先を半ば強引に交換して、根気よく友人関係を紡ぎ続けた。
そんなある日、ポツポツとマスクのお話をしてくれた。
10年前に受けた酷いイジメ。大きな火傷を負わされたという。

「貴方には話したかった。初めて信頼できた貴方には。マスクを取った本当の顔を知ったら、きっと貴方は気味悪がるよ?」

僕は黙って君のマスクを取り、ゆっくりと口付けた。火傷の跡をなぞりながら、それはもう、丁寧に。大切に。

キレイだよ、君の本当の顔は。

そう言うと、君はキレイな涙を流して僕を抱き締めた。



アノ日の涙もイイけど、この涙もいい。痛みと悲しみに藻掻いたアノ日の涙と違っていい。火傷がこんなにも虫除けになってくれたなんて、ああ、良かった。
僕の本当の顔を知らない君が、本当の顔を知ったら、次はどんな涙を流すのだろう?

「大好きだよ、君が何よりも」