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徐々に好きになる

 最初はただの共演者だった。
同業者で、いい声をしてるなあ、演技うまいなあ、とその程度の認識。
でも少しずつ、仕事が重なる機会が増えて、彼の中身が見えるようになってきた。
それが俺たちのファーストステップ。


「あれ、それ、健くんも好きなんだ?」
「え、うん」

 そういって話しかけられたのがセカンドステップ。
背後からそう言われて驚いたのも、いい思い出。人に引かれてしまうほどにはゲームオタクだった俺にとって、
同様の趣味を持つ同年代の友人は貴重すぎるほどに貴重だった。
それから確か、話すことが増えた気がする。



「今度俺に服選んでよ」
「ええ? なんで」
「健、センスいいじゃん。ね、お願い」

 服選びという名目で二人で出かけたのが、サードステップ。
これがきっかけでちょくちょく遊びにいくようになったのを、覚えている。
この時点で一番心を許して、一番落ち着くのが上尾だったのも、また事実。



「いらっしゃ、 って、どしたの?!」
「……フられた」
「とりあえず、家入れ。な?」

 黙って頷く彼を家に招いたのが、最後のステップ。
悲痛に歪めた上尾の顔を見るのがつらかった。彼をこんな風にした女の人を、許す気になれなかった。
それと同時に、思った。

「(こいつを泣かせたくない)」

 それがもう、友情の枠の好きを、ゆうに飛び越えてしまったことを知るのは――
もう少し、あとになってからだ。