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二人きりの同窓会

二拝二拍手一拝。
形式通りのそれを行って次の参拝者に譲ろうとしたらふいに肩を叩かれた。
「やあ、山本」
「え? ……おまえ、武内?」
無遠慮にまじまじと眺めると、声をかけてきた男の顔はおよそ一年前まで寝起きを共にしていた友人のものだった。
驚く俺に、奴は泣き笑いのような笑みを浮かべている。
きっといまは俺も似たような顔をしているはずだ。
そうして俺たちは、どちらともなく抱擁を交わした。

積もる話はたくさんあった。
だが互いに近況を二三言報告しあった後は、ただ静寂だけが続いていた。
「もう、部隊の生き残りは僕らだけになってしまったね」
唐突に沈黙を破ってぽつりと呟かれた言葉は、まだ痛みを伴っていた。
いまでも克明に思い出せる。火薬のはぜる音、血と硝煙の臭い。
「まさか、死んでないのに靖国で会うとは思わなかったけど」
「……そりゃ、仲間の命日だからな」
終戦直前の大抗戦。命を散らすために出撃して、そのまま帰らぬ人となった仲間たち。
自分は生きていて、彼らはもう戻ってこない。
終戦後の日本は目まぐるしく動いていて、この一年ゆっくり休んでいる時間もなかった。
今日だけはどうしても、と無理矢理に時間を作ってきたのだった。
そしてそれは、武内も同じだったんだろう。

「もう行くよ」
煙草の火を踏み消して、武内は告げた。
「きっとまた、来年も会おう」
「俺達二人でか?」
「あぁ。だってもう、僕ら二人しかいないのだから」
武内の瞳には、まだ癒えぬ傷が残っていた。
俺の傷も、まだ癒えてはいない。
時間が必要だった。長い長い時間が。
「来年も再来年もその先も、きっと会おう」
そうして二人で時間をかけていけば、傷は癒えるのだろうか。
この痛みは、ただの思い出になるのだろうか。
「そうだな。約束だ」

俺たちは握手をして別れた。
こうして、俺達二人きりの同窓会は60年以上続いている。