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田舎っこ×都会っこ

「お前の事、忘れた事はなかった」
そう言いながら俺の頬に触れるその手のひらは、じんわり汗ばんでいた。
「…俺は、忘れてたのに」
彼の目を見つめながら言うと、彼は苦笑した。
だって本当だ。
都会の暮らしはいろんなものを失う。
捨てなければ先へは進めない。
俺は夢を叶える為、上京したのだ。
そしてコイツは町工場を守るため、田舎に残る選択をした。
お互い納得のいく別れ方だったと思う。
どっちみちこのまま関係を続けていても、俺らに未来なんてなかった。
それなのに。
(何も、変わってないや)
彼は少しだけシワが増えたくらいで、何ひとつ変わっちゃいない。
低くて甘い声も。
俺を見つめる優しい目も、その奥に光る熱も。

乱暴に抱き締められて、思わずため息を漏らす。
上京してきたばかりと言う彼から少し田舎の匂いがする気がして大きく息を吸い込んだ。
住み慣れた俺の部屋が、彼の匂いで満たされていくのを感じて泣きたくなった。