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元正義の味方×現正義の味方

どうも僕の住むこの星は、よその星から侵略されやすいようで、定期的に異性人がやってくる。
空から攻撃される事も、地上で異性人が大暴れしても、僕らにはヒーローがいて必ず守ってくれた。
ピンチになった時に、必ず現れて敵を倒していくヒーロー。
僕たちの住む星は、その一人のヒーローによって守られている。
僕は、そんな強くて無敵でかっこいいヒーローに憧れていた。
でもヒーローは、完璧人間なんかじゃなかった。


「起きてーー!遅刻しますよ!」

剥ぎ取った布団を投げ、耳元でそう叫ぶと彼はようやくもそもそと起き上がった。
髪はボサボサ、よれよれのTシャツをめくり腹をポリポリ掻きながら、
顎外れるんじゃないかというくらいの大あくびをかましているこの彼が、
ひと昔前まで、この星を守るヒーローだったなんて誰が想像するだろう。

「もう!遅刻しちゃいますよ!」
「……だって~昨夜は君が寝かせてくれなかっ」
「わーー!朝から何言ってんすかバカ!」

思わず菜箸を持つ手に力が入る。
大口開けて笑いながら浴室へ向かっていく彼を睨み付けてから、台所へ戻った。
くそう、顔が熱い。

過去に憧れのヒーローに危機一髪のところで助けてもらい、それから色々あって深い仲。
憧れてたヒーローとは言っても、もう良い年したおっさんで。
ヒーロー業はすでに引退、今では町の土木作業員として働くフツーの人。
僕ももう、夢見る年頃でもない。

朝食用のトーストをセットしたところで、早々に身支度を終えた彼が台所へやってきた。

「おっ、今日は海苔弁か」
「はい。コーヒーがいい?それとも…」

次の瞬間。
体に衝撃と耳をつんざく音。
一瞬気を失っていたのかと思うくらいに、あっという間に状況が一変した。
大きく穴のあいた天井からは空が丸見えで、
我が物顔で飛んでいる飛行物体からは、無数のビームがあちこちに放たれている。
今年に入ってから3度目の襲撃。

「く……大丈夫か」

ハッとした。
彼はいつの間にか目の前で、僕をかばい天井の瓦礫を自らの背中に受けていた。
僕は慌てて隙間から這い出ると、彼の背中に乗る瓦礫をどかそうと……したが、
彼は「ふぬおおおっ」とか言いながら自慢のバカ力で自分で起き上がれた。
背中に傷は、古傷は、と僕が確認する間もなく、彼は一目散で走って瓦礫を登り、空を見上げ叫んだ。

「くそっ!あの帝国軍め!また来やがったな!」

ドカンドカンとあらゆる所が爆発したりして人々が逃げ惑っている。
そんな町の様子を、彼は苦虫を噛み潰したような顔で見ていた。

―――ああ、やっぱり
本当は自分の力で守りたいんだ
自分の無力さに、本当はすごく悔しがっている

僕は彼に近寄り、彼の握り拳にそっと手をやり、優しく握った。
強張った表情は少しだけ弛み、僕を見ると少し悲しげに、でも優しく微笑んだ。

「また、君を危ない目に合わせてしまうね」
「いいえ。あなたが僕を守ってくれるから、僕もみんなを守れるんです」

そうしてキスを交わす。
いつまた攻撃されるかわからない状況で、
バカみたいだと笑われるかもしれないけど。
いつも直前にキスをすると不思議なもので、みるみる内に力がみなぎるのだ。
だって、これが最後だとは思いたくない。

「…さあ行ってくれ。気をつけてくれよ!」

「はい、行ってきます!」

彼から引き継がれた変身ベルトをひっさげ、僕は家を飛び出した。