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俺様とおぼっちゃま

「あーぼっちゃん、待ちくたびれましたよ」
校門の前に黒のリムジンが止まっている。父親の運転手が帽子を扇ぎながら立っていた。
「何で君がいるの?」
「お父様が久しぶりに一緒に食事したいと。乗ってください」
僕の今日の予定は、この後着替えて友達とカラオケに行くつもりだ。
「断ってください」
意味分かんないし、と言う前に彼は僕をはいはいと座席に押し込める。
恥ずかしい。これじゃまるで僕が愚図る子供みたいに見えてしまう。
「せめて校門の前に止めるのやめてくれないかな。皆が見てるよ、みっともない」
「何が? むしろ自慢でしょう。イケメン運転手付きベンツのリムジンに乗れる高校生はそういない」
車は有無を言わさず走り出す。
帰宅中の奴らが狭い路地を滑らかに進むベンツを、目を丸くして見ている。
「あーあつまんねー!」
わざとらしく呻いてみた。少しは申し訳ない気持ちになってくれるかもしれない。
「ガキじゃないんだから、かんしゃく起こすのやめてください」
「うるさい。僕にだってつきあいってものがあるんだよ」
「ないです。というか、どうでもいいです」
何その口の訊き方、と思ったけど、今始まったことじゃない。
どちらにしろ彼の雇い主はあくまで親父だ。
「自由が欲しいなああ! 親父無視して、このまま二人で海でも見に行こうよ」
投げやりな気分。
「お断りします。仕事を失いたくないんで。夏休みにはバハマの海に行くつもりなんで」
無性に腹が立って後ろから運転席を蹴ると、バックミラー越しに睨まれた。

レストランに着くと、慣れた動作でドアを開けられる。僕は動かないぞ。
「今日はフレンチって気分じゃない」
彼は笑顔だったが、胸ぐらを掴まれ車から引っぱり出された。
危うく倒れ込みそうになったじゃないか。
「ここ駐車禁止なんですよ。さっさと出る!」
ヨロヨロと歩いていく僕の後ろで、あっという間にベンツが去っていった。

まあ、いいけど……ね。