誰も祝福してくれなくても

「なあ、本当にだいじょうぶか?」
「大丈夫だって。ちょっと腫れてるだけだから。ほら、すぐ治まるよこんなの」
「でも、お前ふっとんでただろ!まだ少し血も出てるし」
「…うん。でも一人息子を男に取られたんだから。そりゃ殴りもするさ。むしろ殴るだけなんて良い方だよ」
「まあ、そうかも…でもなあ、いたくね?」
「そんなことよりお前の方が大変じゃないの?」
「あー…勘当?まあ、されるとは思ってたから。親父厳しいしな。かえる家なくなっちまった」
「…ごめん」
「おまえのせいじゃねえよ。これは、おれが決めたの。お前と居るって」
「あ、あ…りがと、う」
「うん…って、うわ!なに泣いてんだよ。やっぱり痛かったんじゃねえかよ!ほら、鼻ふけw」

しょうがねえ奴だって笑っても、お前の涙はなかなか止まらなかった。
鼻血だらだらで青タン、たんこぶだらけのお前をそっと抱きしめると、びっくりしたのか
「えぅぐ」って感じの声がでて、ようやく静かになったので俺は言ってやった。

「お前は、体力ないし喧嘩弱いしマイナス思考だし金ももってない。」
「ちょっ、ひど」
「でも、どんだけ茨の道でもいい、だれからも祝福なんていらない。」
「そんな」
「お前がいい。」
「ゆ、」

「結婚しよう。ともき」

お前は夢中で、残像見えるんじゃね?ってくらい頷いた。
おれは「しあわせにしてやる」といいながらいろんなことを考えた。
きっと、結婚したら手を繋いだり、喋ったり、キスしたり、今みたいに抱き合ったり喧嘩したり、一緒に暮らしてみたりして。
くだらないこととか楽しい事を二人でたくさんしていくんだ。
今までとあんまり変わらない生活だけど、きっとそれって幸せなことだ。

「…ゆ、ゆうや」
「うん?」
やっと泣き止んだのか真っ赤な目でお前がたどたどしくはなしかけてくる。
「お、俺、いま、すっごいしあわせだよ」
「うん。俺も幸せだよ。ともき」

俺もお前も、結婚するんだ。口約束だけで嬉しい。今とっても幸せだ。それでいいんだ。
俺の親も、お前の兄弟も、誰も祝福してくれなくても。それでいいじゃないか。


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最終更新:2009年03月29日 16:46