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生意気意地っ張りだけど世話焼きな年下攻め(受けにもタメ語)

「こんちわ、ナカさん?入るよ」
青年がそう声をかけ居間を覗き込むと、繋がった寝室から穏やかな声がする。
「やあカズくん。なに、またお見舞い?もう今週3度目じゃないか。しかも3日連続で」
ベッドに上体を起こしたまま、眼鏡の男が答える。
青年は下げてきた買い物袋をベッドの横に降ろすと、上着を脱いでベッドの周囲を片付けはじめた。
「…いいだろ別に。どうせ俺しか来ないんだから」
「そうだね、君しか来ないね。たかが足の小指の骨折だ」
青年が片付けた端から、男は青年の荷物を物色する。
「…もう来てやんねーぞ。てかそのカズくんはやめろって」
男のお目当てはスーパーの袋ではなく、小さめのトートバッグに入ったタッパーにあった。
「カズくんがダメなら、なんて呼ぶんだよ。お、かぼちゃか、いいね」
美味であろうことはわかりきっているが、だからこそひとつ味見をしたい。
迷わず一番大きい一切れを手にしようとしたところで、青年にタッパーを取り上げられる。
「つまむな、今用意するから」
「はーい」
やれやれ自分は幸せ者だな、と読みかけの新聞を手にすると、居間の奥にある台所から青年が戻って来た。
手には昼に男が食べたカップラーメンの空き容器があった。
「おい!またカップ麺なんか食って!煮付けどうしたんだよ冷凍の、渡しただろ!」
「あー、ジャンクなものが食べたかったんだよ、煮付けもちゃんと食べるよ。カズくんのおいしいごはんだもの」
「カズくんはやめろ」
「じゃあカズマ」
目を見据えてそう呼ぶと、青年は苛立ちと照れをあらわにして言葉に詰まってしまった。
「……」
「返事しないんじゃないか、相変わらず照れ屋だなぁ君は」
「うっさい」
「一真、そう冷たくしないで」
「あーもうわかったよ!いいよカズくんで!」
「なんだよ一人で、せわしいね君は」
青年は不服そうに台所へと向かった。黒のエプロンをかけた背中を、老眼鏡を外し見送る。
純情で正直な恋人をからかうのは、もう自分のライフワークかもしれないな、そう思うと笑みがこぼれた。

30分もしないうちに、食卓が整ったと青年が寝室へ来た。
肩をかりてベッドから降りる。数歩進むと夕餉の香りが鼻をくすぐった。
「幸せだなあ」
ぽつりと漏らすと、青年がびくりと反応した。表情が強張っている。
「…死ぬなよ?」
探るようにそう言われても、こればかりは約束が出来ない。
「うーん、死にたくはないなぁ。まだ君の成人式も見てないのに」
そう答えると、青年は「メシ、食おうか」と言って顔を背けた。

食卓へつくと先ほどのかぼちゃの煮物と、男の好物であるなめこの味噌汁が湯気を立てていた。
その他にも常備菜の切干大根など、青年の作ったオーソドックスな和食が並ぶ。
「美味しそうだねぇ、ありがとうカズくん。いただきます」
味噌汁をひと口飲み、「美味しい」と言うと、青年の顔がほころんだ。
「かぼちゃも食ってよ、ナカさん」
そう促され深い橙のかぼちゃに箸をつけた。
「あー美味しい、カズくん好き好き、すっごく好き」
男の軽い口調が気に食わないらしく、きらきらとほころんでいた青年の表情が見る間に少し不機嫌そうになる。
「いまのはカウントしねえ」
「これまで言ったの数えてるの?馬鹿だね」
「うっさいくたばれ」
「僕が死んだら泣くくせに。あー美味しい」
「泣くよばか」
思わぬ正直な言葉に顔を上げる。
頭の片隅でかぼちゃを味わいながら青年を見ると、出会った頃の幼い彼のままで、淋しそうな顔をしていた。
まだまだ子供か、頼りないな、そうしてたまらない愛しさがこみ上げてきた。
「…遺灰はエーゲ海に撒いてね」
「やだよ」
「そう言うなよ。あ、明日は天ぷらが食べたいな、舞茸の」
「明日は来ないからな、絶対来ないからな!」