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理性×本能 or 本能×理性

 調べたところによると、と彼は云った。

「本能とは動物にも人間にも生まれつき備わっている性質で、理性は人間にだけ備わっている知的特性です。理性で本能を制御して、今日まで人類は進化してきたといわれています」

「……うん。それがどうした……?」

 いきなりつらつらと難しそうな話をしだした後輩に、俺はきょとんとした。彼とは同じ生徒会の役員同士で、密かに交際を始めてもうすぐ2ヶ月になろうとしているところだ。見た目からしておとなしく冷静で小柄な彼は、運動部長で筋肉馬鹿で本能に踊らされているとよく評される俺とは全く正反対の気質で、接点など何もないと思われていたが、ある時「サッカー好き」という共通の趣味が見つかり、それ以降急激に仲良くなった。その後、俺のほうが惚れ込んでしまい、玉砕覚悟で告白し、奇跡的に彼が受け入れてくれて晴れて恋人同士に昇格したわけだが、理性のかたまりと云わんばかりの彼を前に俺の本能はなかなか力を発揮できず、結局あまり進展のないまま今に至っていた。

 本日も「なでしこJAPANの試合の録画DVD」を餌に、彼を自部屋に招き入れ、今日こそは! と意気込むも、本能と理性の狭間でなかなかゴールを決められず、悶々としながら、「昨日の試合は~」などとたわいもない話をしていた。冒頭の本能と理性の話は、そんなたわいもない話の最中に不意にもたらされたものだった。

「あなたは僕のことを理性的で落ち着いていると褒めるけれど、僕からしたらあなたのほうがよほど理性的で優しい。ぼくはあなたのそんな優しさが好きです。でも……」

 でも、と云いながら彼はベッドに腰掛け、自ら制服の下の白いワイシャツの第二ボタンまでをそっと外し、俺を真っ直ぐに見た。

「でも、今くらいは本能の赴くままに従ってもよいのでは、ない、でしょうか……」

 サァっと紅く染められた頬と、シャツの下に覘く白い肌に浮き出た鎖骨。俺の理性ははじけ飛んだ。