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甘党な男前受け

ヤツがどでかいパフェをうまそうに食うのを、
コーヒーを飲みながら眺めるのは嫌いじゃない。
「うげえ、いっつもなんでそんな食えんだよ」と俺が言うと
「欲しいんだったら言えばいいのに」ヤツがスプーンを差し出すので
「別に欲しくないけど」と言いながら一口もらうのがお約束。

そんなヤツは少しでも休みがあると、バイクに乗ってすぐどこかへ出かける。
俺も誘われはするが、俺は青空のもと太陽の光を長時間浴びると
干からびて死んでしまう(気がする)ので、大抵応じない。
この前なんとなくヤツに電話をしたら和歌山県まで行っていた。
「東京から?信じらんねえ」と言うとヤツは
「3徹でゲームする方が信じられない」と言ってきた。

俺たちの趣味趣向は全くもって合わないが、まあ気が合うので
そんなかんじで仲良くやっている。

しかし、ひとつ気の合わなそうなことがある。
いや、趣味趣向がひとつだけ合ってしまったというべきか。
何の事かというと、情事の際の立場のことだ。
まだそれに至ってはいないが、最近の悩みの種になっている。
俺はヤツを抱くつもりだか、何となくヤツも俺を抱く気でいる気がするのだ。


俺とヤツの背丈はそう変わらないのだが、ヤツは外で遊ぶのが大好きなだけあって、
力で俺が勝てる見込みが欠片もない。
ジムに行ったりもする男に、家でゲームしかしてない男がどうやったら勝てるのか。
格ゲーなら勝てる。でも実践では無理だ。
だがなんとかして情事のときは優位に立ちたい。
だって抱かれるのってよくわかんないしなんかちょっと怖いし。
これは、先手を打つしかない。
考えた結果、俺はそのままを告げることにした。
よし、決めたなら今言ってしまえ! 言ったもの勝ちだ!

「抱かせて下さい」

ヤツはチョコレートケーキを頬張っているところだった。
不意打ちに驚いたのだろう、ケーキを喉に詰まらせそうになって
慌ててキャラメルマキアートを口に流し込んだ。
まさかそんなに驚かれるとは思っていなかったので
ゲホゲホと咳をしているヤツの背中をさすりながら俺は「ごめん」と謝った。


「いいよ」

一呼吸置いて、ヤツは緩く笑う。

それがどっちの言葉への返答なのか俺は判断がつかない。
だからといってもう一度聞けないでいると、
「なんで敬語?」と笑いながらほっとした顔でヤツは話を続けた。

「なんか最近思いつめてると思えば…
 欲しいんだったら言えばいいって言ってるだろう。
 ほんとうはおれが抱くつもりだったんだけどさ。
 おまえが欲しがってくれるんならくれてやるよ、なんでも」


ちゅっ、と口づけられたそれは、ひどく甘い味がした。