嘘吐き

一緒に遅刻して怒られたこと、くだらない冗談、放課後に食べたアイスの味とか。沢山思い出すことはあるけれど、それも全ては5年前の記憶。
可能ならまたあの頃へ戻りたいなどと、不毛な考えばかりが巡る。あの時、全てを曝け出してしまえば良かったのか今としては分からないが
…俺は、俺の素直になれない性格と下らない意地のせいで今もまだ5年前の後悔に縛られたままだった。
なあ、哲。お前は、あの日を覚えているか?

お前が俺に、可愛い子に告白されたんだって言った。茶色いサラサラの髪の、目が大きくて…ほんと、可愛い女の子だったな。
『大輔、どう思う?』
俺を見詰めながら聞くお前。なんだよ、なんで俺に聞くんだよふざけんな、そう思ったさ。何か、一気に訳わかんなくなって、笑いながら俺は良かったな、応援するわって。
そのまま顔も見らずに帰った。お前、その時どんな顔してた?お前の声、聞こえた気がしたんだけど何て言ってた?

なあ、あの時…。


今となっては聞けないけどさ。
なあ、哲…好きだったよ。


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最終更新:2012年05月01日 18:58