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勇者×海賊

俺を買ったのが、たまたま奴だと言うだけの話だった。
彼が、たまたま海賊だっただけの話だった。
そして、奴が選んだパーティに彼が入っていたと言うだけの話だった。

冒険は順調だった。
奴は俺の扱いに数分で慣れ、実に的確に俺を操った。
進む冒険。最初は一人ぼっちだった俺にも仲間ができた。
ジャラジャラ鳴るアクセサリーをつけた踊り子の男、上から下まで真っ黒な格好の魔術師の男
そして、無精ひげの海賊の彼。
「ありがとう、ここまで送ってくれて。」
「また陸に戻るのか。」
「行かなくてはいけない場所があるから。」
「陸なんか面白いのか。」
「うん。」
「へえ・・・。」
彼と仲間になったときは今でも覚えている。
「一緒に行って・・・みようかな。」
入り江の凪いだ海がきれいだった。

体当たりの俺の戦法と罠を張る彼の戦法は決して相性がよくはなかったけれど、戦いは楽しかった。
追い詰められて、背中合わせで剣をふるったこともあったし
レベルアップしたばかりの彼の技に驚いたこともあった。
踊り子と魔術師はいつの間にか商人と僧侶に代わっていたが、俺たち二人はそのままだった。
町を抜け、モンスターを倒し、俺たちは進んだ。
楽しかった、本当に。

あの日、あの町の占い館で『攻撃特化型』と言われた。
俺たち二人が認められたようで嬉しかった。
実際、だんだん強くなっていくモンスターのほとんどを、彼と俺で倒していた。
が、奴は俺たちとは違う判断を下した。
『えー、攻撃多すぎんのか・・・。じゃあ海賊切るかww』
次の戦いでは、彼は回復を与えられなかった。
薬草を持つ商人は目もくれない。僧侶の祈りは俺や商人ばかりを癒す。
うめき声を上げ、毒に侵されて戦う彼を見ながら、俺の手は攻撃技を選びつづけた。
戦いが終わったとき、彼のいた位置には平然と、倒したばかりの竜人が収まっていた。
『あー、死んじゃった。控えできないってのは痛いよなー・・・
でもこいつスペック高いしいっかwwwどっかでまたいいの探そwww』
あきれたような笑い声がどこかでした。一瞬で奴だとわかった。
でも、どうしようもない。
俺は勇者だから。魔王を倒すまで奴の言いなりだ。
持って生まれた身を呪った。身をよじって泣き叫びたかった。
どこまでも行けると思っていた。どこまでだって行きたかった。
彼と、二人なら。