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22歳の別れ、36歳の再開

『今日掘ってきたぞ、タイムカプセル』
起き抜けに見た安藤からのメール。
タイムカプセル…はて日本の地下に無数に埋まっているであろうそれらに、俺が関係するものがあるだろうか。
俺には小中高とタイムにカプセルしたいような熱狂した思い出や、当時の俺を物語るなにかなど無い。いつだって無い。
その点安藤は、きらきらとした思い出とその時々の情熱をめいっぱい詰め込むのだろうが。
…そういえばそんな話を誰かとしたような気がするが…あれはいつだったか。
ああそうだ、埋めたときだ、タイムカプセルを。
ここでやっと俺は、大学の卒業式の日に安藤と友人数人でタイムカプセルを埋めたことを思い出した。
そうか。もう十四年も前のことか。

ただのノリだった。
居酒屋でいつものメンツで飲んで、むさ苦しく泣くやつもいたりして。
その場のノリで、店主のおやじさんからコーヒーの空き缶を貰って思い思いの物を入れて近くの公園に埋めた。
だがそれ以上の記憶が無い。ひどく酔っ払っていたせいだろう。
安藤からのメールには続けて、あの公園が近々取り壊されるらしいと書かれていた。
だからって掘りに行ったのか、律儀というか素直というか。
ボーっとメールを見ていたら、安藤から電話が来た。
反射で出てしまうと、耳元へ持っていかなくてもいいくらいのはしゃいだ声が聞こえた。
『久しぶり!なあメール見た!?』
「見たよ、お疲れさん」
『いやー俺もたまたま!すごい偶然だったんだけど、昨日仕事であの辺行ってね、見たら工事の看板立ってたから』
「昨日の今日で掘ってきたのか」
『そう、イヤじゃんなんか。捨てられたら』
「…そうだな」
『尾上はミナちゃんにあげそびれたネックレス、小松はミュージシャンになったとき用のサイン入りピック、古川は家族の写真で、高田のやつ就職祝いの時計入れちゃっててさ。
 みんなにもメールしたら、取りに来るって。明日土曜じゃん仕事休み?』
「休みだよ。集まるのか?」
『うん。あの居酒屋で』
「まだやってんのか」
『やってたよ、いま娘さんが切り盛りしてんだって。おやじさんもいたけど』
「あー、あのさ」
『ん?』
「悪いんだけど俺、なに埋めたか覚えてないんだよ、俺なに埋めてた?」
『あーやっぱり覚えてないのか。べろんべろんだったもんなー俺ら』
「うん、悪い」
『いやいいんだけど、そしたら処分しとく?お前の』
「なんで。なんかやばいもんだった?」
『うん。まあ俺が持っててもいいんだけどさ』
「なに」
『箸袋。居酒屋の』
言われた瞬間に記憶と汗がどっと押し寄せてきた。
ああそうだ、どうして忘れていたのか。
真っ先に掘りに行くべきは俺だったのに。
『読もうか?』
「……いやいい」
『安藤、お前が好きd』
「いいっつってんだろこらぁ!」

22歳の俺、頼む。一発殴らせろ。