※上記の広告は60日以上更新のないWIKIに表示されています。更新することで広告が下部へ移動します。

いい歳して「ちゃん」付け

そもそもの始まりは高校時代のサッカー部で同姓が3人いたことだった。
区別がつかない&監督の「親ぼくを深めろ」とかいう訳の判らないお達し
(多分テレビでやってた日本代表合宿レポにかぶれたんだろう)で名前呼びになった。
一緒の部活だった黒田は何だかおもしろがって
俺が露骨に顔をしかめるのもおかまいなしに(むしろだからか?)
ちゃん付けで呼びはじめやがって、部活を辞めても、卒業してたまたま一緒の大学に入り
たまたま一緒のゼミになった今でも一向にそれをやめようとはしない。
「たくちゃーん」
ああまた廊下の向こうから脳天気な、でも野太い声。ぶんぶん手を振ってるんだろうきっと。
「たくちゃーん?」
天井に反響してんだろうが馬鹿。無視無視。
と思ったらものすげえ足音と共に走り寄ってきて耳を掴まれ耳もとで叫ばれた。
「もしもしたくちゃーん!」
「うるせえ!!!!」
いい加減腹に据えかねて至近距離でがなりかえすと叱られた子供のようにしゅんとなる。
わかってんならやめろ。元体育会系のガタイのデカい男二人が廊下でなにやってんだ。
ああほら周囲の目線がイテぇよあ4年のミスキャンパスじゃねえか笑われてるよ畜生。
黒田は相変わらず捨てられた犬のようにしゅんとなっている。
「あのな、俺らもうハタチ越えてんだぞ」
「わかってるよでもたくちゃんはたくちゃ」「やかましい!!」
「大体俺あ名前呼びでちゃん付けってツラかよおい?
そこらにいる女共だってドン引きしてるじゃねえか
そもそもそんなにモテる訳じゃねぇけど俺が女にモテなくなったらてめえのせいだからな!!」
黒田は一瞬ぱくりと口を開け、一旦閉じたあと、目を伏せて
「………その為にやってるんだぜ」
ぼそりと吐き捨ててくるりと背を向け大股で立ち去っていった。
あとには何が起こったんだか瞬時に咀嚼出来ない俺だけが、ぽつんと廊下の真ん中に残されていた。