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あの星取ってきて

あいつと初めてあったのは、ネオンきらめく夜の街だった。
色とりどりの偽物の星の輝くネオン街が好きだと言っていた。特に、昼間は緑の川面に映る不確かな灯りが好きなのだと。
そんな関係になったのは出会って一月ほどした頃か、身体を重ね、まくらごとに過ぎない甘い言葉を重ね、ふと気づけば、抜け出せないほど本気になっていた。

夜景が綺麗だと評判のホテルのラウンジでそれを告げたとき、あいつは酷く傷ついた顔をして眼下の街を指差して一言
「あの星取ってきてくれたら、付き合ってやる」
と言った。
白くて細い指の先には、きらきらと輝く猥雑な地上の星々。
その先になにか特別に魅力的な店でもあるのかとガラスを覗き込んで、後ろからしたたかはたかれた。

考えて考えて考えて、未だかつて無いほどよくない頭をひねって、俺は生まれて初めて多大なる借金を作ってマンションを買った。
あいつの好きなネオン街からさほど遠くもない、中古で2DKでこじんまりとした、小さな、正直あまりパッとしない部屋だ。
だけど、機能的には申し分ない、多分。
あいつが外にいるときは、帰り道に迷わないように灯りをともす。あいつが帰っているときは、地球が命を育むように、あいつを包み込む安らぎになるような灯りを…温かい光を。

ありふれたキーホルダーにつけたありふれた形の鍵を手にプロポーズまがいの言葉を持って行った俺に、あいつは初めて見るような笑顔を見せた。
それからはずっと、この小さな部屋にはオレンジの星が灯る。