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福袋

風邪で寝正月になったあの人に、福袋を買った。
早く渡して、喜んでもらって元気になってほしくて、小走りで道を急いだ。

それがいけなかったんだ。
道路脇の学校のグラウンドを囲うフェンスが破れてて、太い針金が歩道側に伸びているのに気付かなかった。
ちょうど雨が降っていて、足元は水溜り。
急いで歩く腕が振り回す福袋は、当然紙袋。しかも雨の水気を含んで若干ヨレヨレになっていた。

ビリっていって。
バサバサっていって。
ビチャビチャっていって。

「うわっ!? 」
って悲鳴を上げた時には、あの人の為に買った福袋は破れて大口を開け、
温かそうなマフラーやセーターや、中身の判らなかった商品が水溜りの水を吸って地面に広がっていた。

お天道様と同様に、両目から雨を降らせながらお見舞いに来た僕を、
あの人はまだちょっと熱い手の平でふわりと僕の頬を包んで、そっと笑って『災難だったね』って、慰めてくれて。
病身のあの人を元気付ける筈だった僕の方が、逆に元気付けられてしまった。

セーターやマフラーは泥水を吸って変な色に変わってしまったけど、洗えば多分大丈夫だよって笑ってくれて。
水を吸ってシワシワになってしまった温泉旅館の宿泊券を、嬉しそうに僕の湿ったほっぺたに貼り付けて、
『早く風邪治すから、一緒に行こうね』って、熱で潤んだ目で、とっても優しく笑ってくれた。

楽しみにしてるよ、って言う優しい君の笑顔が、僕の一番嬉しい福袋。

ただ、その後。
普通に洗濯したマフラーとセーターは見事に縮んでしまったわけだけど。
これは、さすがに怒られてしまったけれど。

君と行く温泉、僕も楽しみにしています。だから早く元気になってね。