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物凄い受けの俺

「ありがとう、変態仮面! 今まで男同士で悩んでいたのが嘘みたいだ」
20歳前と思しき内気そうな青年が満面の笑顔でそう言った。
青年の前に立つのは奇妙な格好の男。
スレンダーな肢体に黒いズボンしかつけておらず、惜し気もなく晒された
胸板は白く滑らかだ。顔を覆う白い仮面が妖しい魅力を醸し出していた。
「悩めるゲイを救うのが我が使命! どんな激しいプレイもいとわない!
体に漲る『物凄い受けパワー』! その名は 変 態 仮 面 !!!」
ヒーローさながらにポーズを決め、男はそう言い放つ。
「何かあればまた呼んでくれ!ではさらばだ!」
男は不敵に微笑むと素早く身を翻し、闇の中に消えた。


「はぁ…疲れたー」
自宅に戻ると、俺は仮面を外してソファへぐったりと座り込んだ。
俺は瀬崎真・21歳。昼間は大学生、夜は素顔を隠し裏稼業に精を出している。
瀬崎家の男が代々受け継ぐ裏の仕事――それは悩めるゲイの手助けをする事だ。
俺が18になったその日、親父からコスチュームが渡された。
「お前も今日から『変態仮面』の一員だ」
それ以来、俺は親父や一族の男達と共に変態仮面をやっているという訳だ。
親父は「俺達は”性技の味方”だ」と陽気に笑うが、この仕事は酷く消耗する。
体が辛いのは俺が受け役専門だからなのだが、精神的にもかなりキツい。
助けを求める男性の中にはプレイそのものより、悩みを聞いて欲しい・或いは
これからの生き方について助言が欲しいという人も多く、その望みにとことん
つき合わなくてはならない。
どんな時も厳しく己を律し、心の均衡を保たないと到底できない仕事だ。
俺はテーブルに置かれた予定表の束を手に取る。
変態仮面への依頼を受け、仕事を割り振るのは瀬崎家の女の仕事だ。予定表の
一番上に貼られたメモには母の筆跡で、
「真へ。今月は依頼が多いけど体に気をつけて。ご飯ちゃんと食べなさいね」
と書いてあった。
小さな子供に聞かせるような言葉に苦笑しつつ、書類に目を通す。
「明日も忙しくなるな」
しかし俺は内心安堵していた。忙しさが心の迷いを忘れさせてくれるから。

『驚かないで聞いて欲しい。俺、瀬崎が好きだ』
『……! 大嶋、何言って――』
『ごめんな、こんな事言って。ずっと前から悩んでた。
友達としてずっと側に居る方が良いとも思った。だけど――』
『大嶋!』
『やっぱり友達じゃ駄目なんだ』

親友の真剣な表情を思い出してしまい、胸が苦しくなった。
(俺だって……でも……)
【誰にでも分け隔てなく体を与えよ。しかし決して心は与えてはならない】
これが俺達変態仮面の鉄則だった。
それは変態仮面だけが発する『物凄い受けパワー』を生み出す為の絶対条件だ。
心が乱れると”性技の味方”としての絶大な能力が失われてしまう。
「大嶋……ごめん……」
瀬崎家の一員として、使命を捨てて大嶋を選ぶことなど俺にはできなかった。


その時の真は、まさか思いつめた大嶋が「変態仮面ホットライン」に相談依頼
をして来るとは予想だにしていなかった。
そして偶然大嶋の担当になった真が、正体を隠す辛さや恋心を抑える苦しみを
味わうようになる事も。

何も知らない真は、どうすれば大嶋との関係を元に戻せるのか思案を巡らせて
いるのだった。