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てぶくろ

眼鏡はすぐ曇るし雨混じりの雪は降るし、だから冬は嫌いだ。
校舎の入り口で眼鏡を拭いていると後ろから背中を叩かれた。
「純、今日一緒帰ろうぜ!」
振り返ると勇太が立っている。
傘が目当てだなと思いながら僕は勇太との間に傘を差して歩き出した。

天気や授業の話をしながら帰り道を歩く。
言わないようにしているけれど、一緒にいると心が温かくなる気がして、やっぱり僕は勇太が好きだなと再認識する。

雨混じりの雪はすっかり雪なった。
冷たい手をさすって暖めていると、勇太が手袋を片方押し付けてきた。
「片方貸してやる。」
「いいよ、借りたら君が寒いだろう。」
手袋を返そうとするが勇太は受け取らない。
仕方なく手袋を右手にはめると、左手を掴まれて勇太のコートのポケットへ押し込まれた。
人のコートの中で手を握られて歩くのはなかなか歩きにくいな、と考えながら僕は勇太の手を握った。
「純の手はいつも冷たいな。」
「冷え性だからかな?君の手はいつも暖かいね。」
視線を合わすと、勇太は何か言いかけてから口を閉じてうつむき、僕の手を振り払った。
「……俺が子供だって言いたいのかよ、半年と十日しか誕生日違わないくせに!」
表情は見えないけれど赤くなった耳から察するに怒っているのだろう。
「そういう意味で言ったわけじゃないよ、ごめんね。」
そう言ったけれど、勇太は何も言わずに走って帰ってしまった。

最近の勇太は僕といると怒りっぽいし目を合わそうとしない。
もしかしたら僕は勇太に嫌われたのかもしれない。
右手の手袋をじっと見て、手を振り払った勇太を思い出した。
これ以上嫌われるよりは少し距離を置いた方がいいのかもしれない。
そう考えながら僕は家へ歩き始めた。



ある日の「俺」の日記

今日は純と一緒に下校した。
寒そうにしてるから純に俺のてぶくろを片方貸してやった。
純の手が冷たいって言ったら「君の手はいつも暖かいね。」って言われた。
「純と手をつないでたらあったかくなるんだ。」って言おうとしたけど、なんか恥ずかしい気がして言うのをやめた。
言うのをやめたらなんだかイライラしてきて純に八つ当たりをしてしまった。
明日、純に片方貸したままのてぶくろを返してもらうときに今日のことを謝ろう。