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×綺麗なニューハーフ ○ごっついオネエ

高校時代の同級生に久米川という男がいて、俺はそいつとバンドを組んでいた。
ヴォーカルだったのだが、頭の出来と反比例に顔が良かったから女にモテて、
根拠もなく自信家で自己中、金持ちの坊な上考えるより先に手が出る単細胞。
空気が読めない(読む気もない)から友達らしい友達もいないくせに
本人はそんなことは全く気にしない。結局奴がずっとそんな調子だったために
徐々にメンバーの足並みも揃わなくなり、バンドは卒業前に自然消滅した。

正直俺は久米川のことを友達だと思ってなかったのだが、向こうは違ったらしく
卒業してからも突然連絡があったり毎年手書きの年賀状が来たりしていた。
その久米川から昨日、結婚式の招待状が届いた。

『おお、元気かよ!小平オマエ、どうよ最近!?』
「…どうよじゃねぇよ。招待状見たよ、おめでとう。けどこれ、お前な…
 日時しか書いてないんだけど。つーかお前の手書きだし。」
『あれ、まじで?ワリぃまた地図送るわ。まぁ知り合いの店なんだけどさ』
意外だった。てっきり金にあかせたド派手婚を想像していたので。
社会に出て数年、この歩く迷惑にも、少しは変化があったという事だろうか。
「そういえば奥さんの名前なんて読むんだ?“深夏”って」
『あはははっ、読っみにくいよなぁ!?…ミナツって言うんだけどさ!』
電話越しに照れているのが伝わってくる。…変われば変わるものだなぁ。
「かわいい名前だな」
『ははは、名前だけはなっ!つーか本名じゃねぇし、本名は裕司っつって』
「……?…は?」
『女なんだけどさ、心は。ただ戸籍は男ってやつ?いるだろ、ときどき。』
「ああ、え、うん、あー…うん?」
『まあ籍は入れられねぇからほんとに形だけだし、俺も家とは縁切ったから
 オマエらと今やってるバンドの奴らしか呼んでないし。気軽に来てよ?』
「ああ、…おう」

結婚式当日、久米川の隣で真っ白なウェディングドレスに身を包んでいたのは
俺達のなけなしの想像力を振り絞って思い描いたいわゆる「綺麗なニューハーフ」
…とは清々しいまでにかけ離れた、新郎よりひと回りほど体躯の頼もしい
いかにも頑健な…個性派美人だった。
しかし二人の照れくさそうな、嬉しそうな笑顔を見ていたら、
心から幸せになって欲しいという気持ちだけが、ただただ湧いて来た。