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どっちからキスした?


「どっちからキスした?」
居酒屋のトイレの個室で男が男につめよる光景はさぞかししょっぱいものだろう。
でも俺は必死だった。
見上げる男は不機嫌そうに眉をしかめている。
いいから答えろよこのやろう。

さきほどこいつはトイレの前で後輩の女の子とキスをしていた。
それを偶然目撃してしまった俺に気づいて女の子は照れたように逃げ去り、残されたこいつを俺はトイレに押し込んだ。

別に報われる恋だなんてハナから思っちゃいない。
友達として一緒にいられるだけでよかったんだ。
でも実際そういうシーン見ちゃったらさ、どうしようもなくなった。
せめてさっきのキスが彼女からなら少しは救われるかもしれないなんて思ってこいつに縋る俺は馬鹿だ。
そんなもの聞いたところでなんの慰めにもなりゃしないのに。

「なあ、どっちだよ。答えろ、」
え、と思ったときにはもう口を柔らかくふさがれていた。
目前には妙に真剣なあいつの顔。
見つめあったまま顔が離れていった。
「さっきのはあっちから急にされたんだよ。あの子俺が好きみたい。残念だったな」
「え、あ、え」
「そんで今のは俺からだ。俺から。おまえに。したんだからな」
それだけ言うと俺を横にどかしてあいつはトイレから出ていった。

「え、あ、は?え、ええ?」
なにがなんだかわからず、そのあと俺はトイレに30分閉じこもった。