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羽毛布団×電気毛布


「あーあ。…寝ちゃった?」
御主人様の呟きとともに、その日の夜、やわらかく憧れの人が降ってきた。
その人は基本的に年に2、3度しかお目見えしない。御主人様が大切な客人をもてなす時のみ、クローゼットの最奥から仰々しく真空パックのカバーに包まれた状態で顔を出す。
近づきにくい外装の高級然とした姿に反して、とても軽くて優しい肌触り、そして何よりご主人様が絶大の信用を寄せている温もり。オマケに天然モノである。
元々貧相で非天然モノ、かつ常日頃のヘビーローテーションで伸びきってしまった俺は憧れざるを得なかった。
勿論そこには、羨望という都合の良い言葉に隠された、少々の嫉妬という醜い感情もあったのかもしれないが。
『あれ、また会ったねえ。この客人が来るようになってから、君とはよく一緒になるなあ。』
『そうですね。すみません、俺なんかと一緒じゃ居心地悪いでしょうに…。』
『ううん、ううん。なぜ、なぜ?オレはとても嬉しい。こうして君と沢山会えるようになったことも、御主人の想い人を温めることが出来ることも。』
『え!?この客人…そうだったんですか、俺…全然気付かなくて…。』
情けない、強烈にそう思った。俺がこの人に唯一勝てるところと言えば、御主人様と一緒にいる時間が長いこと位なのに。
年に数回しか顔を出さない、しかも御主人様とはさほど触れ合うことも無いこの人の方が、御主人様の変化に的確に気付いていた。
『ああ、ああ。そんなに悲しい顔をしないで。ごめんね、どうしてだろう。オレはいつも君に悲しい顔をさせてしまうね。』
『ち、違うんです…!凄いなって思って…あなたは見た目も中身も素晴らしくて、その上御主人様の気持ちまで悟れて…完璧で…。
俺みたいな全然駄目な奴とこうして一緒になってもらうことが申し訳なくて、それで…。』
『落ち着いて落ち着いて。ねえ、オレは完璧じゃないよ。今だってそう。一番大切な人に何も伝えられなくて…。』
え、と俺が言いかけた瞬間、御主人様が俺達越しに客人へと覆いかぶさってきた。
「好き、なんだ…。どうしようもない、くらい。」
優しく悲しいその声色に思わず顔を上げた俺の目に、御主人様と憧れの人の表情が重なって見えた気がした。客人は未だ安寧の眠りの中にいる。