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幼馴染でNTR

最初の罪は、七つのときに犯されました。
 初めてミハイルと会ったときのことです。
 隣に越してきたという一つ年下の男の子と引き合わされたとき、私はその美しさに言葉を失いました。
 敬虔な両親によって聞かされてきた神の教えは、そもそもの始まりに覆されてしまったのでしょう。
 ――同性を愛してはならない――。
 ミハイルは最果ての海のような暗い瞳で私をしばらくの間見つめ、それから思いついたように微笑しました。
 そうして、私は彼の忠実な崇拝者となったのです。

 ミハイルはただ美しいだけではなく、どこか人を虜にする魔性を確かに持っていました
 そして幼い頃から傍にい続けた私には、その魔性が日に日に花開いて行くのがわかりました。
 彼が歩くたび、絹の金髪が風にゆらめくたびに、男も女も皆ため息をついて彼を見送りました。
 私はそうした光景を見るにつけ、得意になったり、逆にやるせない気分になったりしました。
 彼はそういう私の気持ちを知ってか知らずか、涼しい顔をして羨望と憧憬の眼差しの中を通り抜け、私に笑いかけてみたりするのです。 

 第二の罪は、彼が十五になったときに犯されました。
 その日ミハイルは風邪で学校を休み、もともと体の弱い彼を心配した私は学校から帰るとまっすぐに隣家のドアを叩きました。
 二度、三度とドアを叩いても、誰も出てくる様子はありません。
 試しにドアノブをひねるといとも簡単にドアは開きますが、声を出して呼んでも家中は静まり返っています。
 大胆になった私は、意を決して家の中に上がり込むことにしました。
 もしかしたら、ミハイルはひとりきりで苦しんでいるかもしれない。
 その思いが、私の足をひとりでにミハイルの寝室へと運んで行くのです。
 しかし、いざ寝室の前まで行くと、私の足は止まりました。
 何の音もしないと思われていた部屋の中から、わずかに人の声が漏れ聞こえてくるのです。
 私はなにか不吉な予感に怯みながら、静かに寝室のドアを細く押しあけました。
 ベッドの上には、ミハイルと彼の父親。
 二人は男女の睦みあう姿をしていました。
 ミハイルは、私が見たことのない表情で恍惚と腰を動かし、何事かを父親の耳に囁きます。

そして、ゆっくりとその目が立ち尽くす私を捉え、わずかに驚きに見開かれました。
 しかし、すぐに瞳は平静を取りかえし、瞬きもせずに私をじっと見据えるのです。
 私は一瞬にして打ちのめされました。
 どういう経緯かは知らないが、彼が父親とのそうした関係を完全に受け入れていることを完膚なきまでに理解したからです。
 ミハイルが亡くなった母親の連れ子であり、彼の父親と血のつながりのないことを知ったのは、その少し後のことでした。

 逃げるようにその場を後にした私は、誰にもそのときのことを漏らしませんでした。
 ミハイルもそれを望んでいないだろうということは、わかっていました。
 それからミハイルと私は、自然と疎遠になり、お互いに大人になっていきました。
 私は、村からは珍しく、隣町の大きな大学に進学しました。
 医学の道を志したのはもちろん人々の命を救いたいという立派な使命があったものの、心のどこかに立派な職業についてミハイルを迎えに行きたいという願望があったことも確かです。
 ミハイルはといえば、その頃には街のゴロツキたちと親しくするようになっていました。
 しかし、不思議なことに、そのことによって彼の品位は少しも損なわれたりはしないのです。
 そしてどの酒場にいる女よりも、彼は美しく見えました。 

 そして、第三の罪が犯されたのは、つい昨日のことです。
 私は来年の春から町医者として勤務することが決まり、浮き立った気持ちを隠せませんでした。
 そんな折に、ミハイルから会いたいという連絡をもらったものですから、なおさらのことです。
 私はミハイルに言われるまま、ある廃屋を訪れ、そして深く絶望しました。
 住人が夜逃げしたのだと言う村はずれのその家で、ミハイルが私に見せたのは恋人との睦みあいでした。
 その相手は、男でした。
 ディーンという名のその男は、私も何度か見かけたことがありました。
 海軍くずれの傭兵だとかで、ちょっかいをかけられた女たちが嬌声を上げているのを耳にしたこともあります。
 ディーンは筋骨たくましい腕で悠々とミハイルを抱きかかえながら、彼のあられもない姿を私に見せつけました。
 娼婦のような言葉がミハイルの唇から次々と零れだし、私が耐え切れなくなって耳を塞ぐと、ディーンは声を上げて笑いました。

私は屈辱と怒りに震えましたが、ディーンの冷やかな灰色の眼に捉えられると、何も言うことができなってしまいました。
 ディーンは私にない物を持っていて、それでミハイルを支配している、そう感じました。
 ディーンは敏感に私の怯えを察したようでした。
「あんたは逃げないな。もっと見たいんだろう」
 唇の端にシニカルな笑みを浮かべながらディーンは言うのです。
 その実、彼の眼はいっさいの笑みをたたえていませんでした。
 私は、もうなすすべもなくミハイルへの思いを告白させられ、その間、ミハイルはディーンに悪戯されときとして彼自身に突かれながら、さも幸福そうな微笑を私に向けていました。
 すべてが終わりうなだれる私の顔を、ミハイルがそっとあげさせました。
 花のような唇が、音もなく愛している、と動くのを私は絶望して見つめていました。
 ――これで私の話は終わりです。

「しかし、それはあなたの罪ではないでしょう」
 長い告白が終え沈黙した男に、神父は困ったように口を開いた。
「一つ目の罪は男性を好きになったこと。二つ目の罪は義理とはいえ親子間の姦淫を見過ごしたこと。しかし、三つ目の罪に関しては、あなたはミハイルを抱かなかった」
「違います! 違うんです神父様」
 男は弾かれたように顔を上げ、今にも泣きそうな顔で神父を見た。
「抱かなくてもよかったんです、俺には」
 道に迷った幼子のような表情で男は呟いた。
「笑われ詰られ、見せつけられ、犬のように扱われて、俺はそれが気持ちよかったんです」
 それきり男はすすり泣き、顔を上げることはなかった。