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当て馬同士の恋

俺は祐樹に告白しようと決断した。

その恋は一目ぼれだった。
7歳のとき、転校してきた祐樹を見て何かの病気じゃないかと心配になるほど心臓が動いたことを思い出す。
おでこを出して笑う祐樹の顔を見るたびに息ができなくなった。
「僕、転校したばかりで不安だったけどまこちゃんがいてよかった。まこちゃんの傍って安心する」と言われてなんと返したのか覚えていない。
ただ、その後歳の離れた姉に泣きじゃくりながら病気で死んでしまうかもしれないと言った日のことを昨日のことのように思い出せる。
この気持ちが恋だと気づくのに結構な時間がかかった。

小学生高学年になってから祐樹がスポーツの中で1番バスケが好きだということを知った。
そう知った俺は、興味のもてなかったバスケを始めた。
祐樹が好きだといったり興味を持った選手はビデオを何度も見直して真似た。
対校試合で負けたとき、顔に悔しさをにじませ体育館の床をたたいていた姿。勝ったときの満面の笑み。全てが俺の気持ちを高揚させた。
喜ぶあまりに抱きつかれた時も頭の中が真っ白になって何の対応もできずにいた。
監督が笑いながらガシガシと音を立てながら俺と祐樹2人の頭を撫でてようやく現実に戻ってきたくらいだ。
その日の夜抱きつかれた記憶が、感触が甦って眠れなくなった。そのときは、こんな時間になっても勝ったことに興奮していて眠れないんだ! なんて思っていた。
まだこの気持ちが恋だってことに気がついていなかった。

自覚しかけたのは中学のフォークダンスの時だった。
学校の女子の数が足らなかったから、身長が低かった祐樹が女子側に行って「やってらんねー。信じらんねーよな、真」とぼやきながらも俺と手を繋いで踊ってくれた。
「だよな」なんて返しながらほかの女の子に感じない気持ちがこみ上げてくるのを不思議に思った記憶がある。
ほかの子に変わったときも俺の意識は祐樹に向いていた。
当たり前だけど前と後に踊った女の子に比べて、握った手は意外と大きくてゴツゴツしていた。
ダンスが終わった後、キャンプファイアーが灯す薄暗い中、見慣れた自分の手をジッと見つめた。
完全に自覚したのは祐樹と聡が付き合い始めてからだった。
それまでは自分の気持ちが本当に恋なのかまだ疑っていた。頭の中でまさか、でも……と繰り返して考えているうちに出遅れてしまった。
聡の隣で幸せそうに笑う姿に胸が痛くなったけど、まだ諦めきれなかったけど、恋人の隣で「俺、変かな?」と聞く祐樹に「別にいいんじゃない? 男同士でも」とだけ返しておいた。
「お前が誰と付き合っていたとしてもさ。俺、お前の友達だし」と付け足しもした。
コレでいいんだと自分の気持ちを取り繕うたびに、どうしようもなくなるくらい、自分が情けなくなった。

聡と祐樹は高校で初めて会ったわけじゃないらしい。
小学1年までずっと一緒に過ごしていたらしく、引っ越す前日には結婚の約束もしていたらしい。
自慢そうに言ってくる聡に相槌を打ち、「結婚なんてできるわけないのになー」と笑う祐樹に聡がちゃちゃをいれ、いちゃつく姿を見て早く昼休みが終わればいいのになんて考えていた。
3人で過ごしているうちに、聡のきな臭い噂や中学時代の同級生の嫉み混じりの「遊び人」と言う声が耳につくようになった。
本当かどうか走らないが噂の内容に対して胸騒ぎがした。祐樹が聞いていないか不安だ。

祐樹に告白しようと思ったのは聡が浮気をしていると知ったときだ。
聡の浮気相手は和弘というらしい。そしてそいつに聡と別れるように要求されたらしい。
泣きながら「もう、俺……どうすればいいのかわかんねー」と相談してくる祐樹の姿を見て、隠していた思いが胸の内に広がる。
俺は祐樹に告白しようと決断した。
「あんな奴やめろよ」と言ったら泣くのをやめてこっちを見た。涙の跡が頬に残っていた。
ハンカチで涙をふき取りながら「好きだ」と言った。
「ごめん……俺。あいつは浮気するし性格は俺様だし最低な奴だけど、それでも……好きなんだ」
ごめん、ごめんと繰り返した後へたり込む俺から目を離しその場を発った。
なんでそんな奴がいいんだろう。……なんで俺じゃだめなんだろう?
偏頭痛と震える足に悩まされながら家に帰った。晩御飯を食べずに眠った。夢で祐樹と笑っていた。
どうしようもなかった。

そして11年の恋が終わった。
結局祐樹は聡の隣に居て今も交際を続けている。それでも諦められない俺が居る。
そしてなぜか聡と浮気をしていた男を慰めている。
「俺は本気だったんだ……本当に好きで、ぐずっ……ううっ」
なんでこいつ慰めてるんだろう。俺だって泣きたいのに。
ただ、失恋して泣く姿を見て放っておけないと思った。