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小古見(しょうこみ)学園から矢追(やおい)学園に転入してきた男

男子校と聞いていたから女子との出会いなんて期待していなかったが、やはり男ばかりだった。
私立矢追学園は全寮制だ。
この先二年間、野郎だらけの環境で過ごすことを思うと、ちょっと泣けてくる。
友情はもちろん大事だが、ロマンスも欲しいお年頃なのだ。分かって欲しい。
時々、やけに女の子っぽいフワフワキラキラした造形やキレーな顔のやつも見かけるが、
あいつらにも一律にチンコがついているのだ。現実は非情だ。
そんなこんなで俺は新しいクラスメイトに紹介され、壇上に立って自己紹介を終えた。
担任はてっぺんからつま先までじろじろと眺めて、困惑したようにうなった。
「そうだな……鈴木はまだ受か攻か決まってないから、どっち側に座らせたらいいのか……」
「は……?」
ウケ?セメ?何それおいしいの??。
混乱しているのは俺だけのようで、クラスメイトたちはしたり顔で頷いている。
すると、窓際の一番後ろに座っていた生徒が、すっと手を挙げていった。
「先生、俺の右側が空いてます」
「あっ!お前は……!」
今朝方、学校に遅刻しそうになって全力疾走していたときに道でぶつかった食パン男だ。
「なんだ攻村、知り合いか?」
「ええ、まあ。ちょっとした……ね」
なんだか薄気色悪い間をおいて、ちらりと俺に視線をよこす。
道で正面衝突したくらいで、妙に意味ありげな前振りをしないで欲しい。
俺は内心密かに焦っていた。このままではあの変な人と知り合いということになってしまう。
「よし。じゃあ、鈴木は暫定受ということでいいか」
担任が力強く頷き、クラスメイトが温かな拍手を贈る。
俺本人の意に反して、クラス中が承認ムードになってきた。
不幸にも空気の読めるタイプである俺は、なし崩し的に攻村とやらの隣に着席する運びとなった。
「よ、よろしくな!」
粘っこい視線とか周囲の雰囲気とか、諸々の嫌な予感を無視して、空元気を振りまいてみる。
攻村は頬杖をつき、斜め45度に顔を固定したまますごい流し目でこちらを見た。
「お前は今日から受だ。俺だけのな」
倒置法の好きな奴だ。というか、そもそも言っている意味が分からない。
言葉の通じない異国に放り出されたようで、ひどく心許ない。
心細さを紛らわそうと、窓越しに外を眺めた。空が青い。
転校前の学校に残してきた仲間を懐かしく思い出す。馬鹿だが楽しい連中だった。
転校早々しんみりしてしまった俺に気を使ったのか、前の席に座っていた茶髪が振り向いた。
「ボクは受宮渚、よろしくね」
小学生みたいな童顔茶髪が、にこりと微笑みかけてくる。愛想のいい奴だ。
「鈴木君、小古見から来たから多分、受とか初めてだよね。
慣れないうちは大変だと思うけど、分からないことがあったら何でも聞いてね☆
チンピラに襲われやすい場所とかお勧めの密会スポットとか、色々教えられると思うから」
話の内容はさっぱりだが、親切そうな受宮の様子に打ち解けて、俺は一番の疑問を口にした。
「ところでさ。ウケって何?」

驚愕したような周囲の視線が、針のように降り注いだ。