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一番星

それが言い訳ではないなどと訴えたところで、一体誰が信じるというのだろう?
彼も、自分自身ですらも。

今もなお、根限りと力の込められた指の強さを忘れられない。
「分かっています、あなたにとって今が一番大事な時期だということは。俺なんかに構っちゃいられないって事も。
けど、どうか忘れないで。あなたが大事。
あなたが大好きです。
いつだって、どんなあなたでも見つめていたいんだ」
それが、最後に会った彼の言葉。

「あ、いちばんぼしーい」
小さな指が紺色の天を差す。
ああ、そうだなと適当に相槌を打ちながら、買い物袋を提げた方とは反対の手で、幼稚園鞄をカタカタいわせて今にも駆け出しそうな手をしっかりと握る。それをブンブンと振りながら、
「いちばんぼしは、お父さんのほしー」
「おいおい、何だそりゃ。一番でっかいからか」
「ちがうの。ぼくらのこと、いつもいちばん見守っててくれるのがお父さんだから、いちばんぼしはお父さんのほし。
ヒロくんと二人で、そう決めたの」
幼子はなおも星を指す。あなたの負担になりたくはないのだという、彼の微笑が不意に蘇る。あなたにとっての一番が俺ではないという事くらい分かっていると、それでも、だからあなたが好きなのだと迷いもなく言い切った男の笑みを。
「君は信じたのか、子供を盾にしたあの薄っぺらな言葉を」
その場凌ぎの苦しい言い訳にしか過ぎないと誰にも分かったはずなのに、男は微笑んで身を引いた。
「ヒロくん、またあそんでくれるよね。やくそくしたもんねー」
ゆびきりしたもんねとはしゃぐ無邪気なその指は、強力なしるべのように、ただひとつの星を指し示していた。