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ツンデレ泥棒×お人好しな刑事

まったくあの馬鹿野郎が!
飛んでくる弾丸をかわしつつ、床で蹲っている男に対し、悪態を吐いた。
男の腹部からは大量の出血。背後には金を盗まれた怒りで目が血走っているマフィア。
あのままだと、あの愚かな刑事は死んでしまうだろう。
長年、自分を追いかけている正義感の塊のような男。
見るたびにイラついてしょうがなかった。
刑事が勝手にしくじったというのなら、「馬鹿な奴」と嘲笑い、そのまま放ってさっさと逃げ出しているのに。
あの男が自分を庇って撃たれたのでさえなければ。
泥棒助けて、自分が死にかけるなんて笑い話もいいとこだ。
世の中、善が報われるとは限らない。むしろ、自分の生きてきた世界ではお人よしであればあるほど早死にしていたのだ。
一向に逃げずにいる自分に苛立ちを覚えつつ、刑事の方に目を戻せば彼の周りは十数人のマフィアで取り囲まれていた。
刑事の息はかなり荒く、最早抵抗する事も出来そうにない。
――あのままだと殺される。
そう思った瞬間、どうするべきかを考えるまでもなく、勝手に身体が動いた。
部屋中に煙幕が充満する。混乱するマフィア達をよそに素早く地面に下りると、刑事を抱かかえ、ワイアーを使って宙を飛んだ。
助け出したのがどこかの可憐なお嬢様とかだったら楽しかったが、残念ながら腕の中にいるのは体格のいい男だ。しかも商売敵。
身に起った事が理解出来ず、目を白黒させている刑事をよそにワイアーの反動を使い、建物の外へ出た。

「何で……」
しばらくして落ち着いたのか、刑事が口を開いた。いつもは煩いぐらい声を張り上げるのに今は酷く弱弱しく、これは早く病院に連れて行ったほうがいいと思った。
「何でと聞きたいのはこっちの方だ。何で助けた」
「……だっておれは刑事だから、目の前の人間に危機が迫っているのに見過ごすわけにはいかない」
「それで死に掛けるんじゃざまあないな」
「確かに。でも、助けてくれたじゃないか。……本当にありがとう」
その言葉に小さく舌打ちをし、何ともいえない感情で刑事を見た。庇った相手に助けられ、それでも素直に礼を言うなんてどこまでお人よしなんだか。
「私は泥棒だけどな、物は盗んでも人の命は盗まない主義なんだよ。私を庇って死なれたら、私のポリシーに反する事になるからね」
「ははっ。だからお前は嫌いにはなれないよ」
刑事が静かに笑った。
「さて、もうすぐ病院だ。お前を預けたら、私はさっさと消えるからな。お前を助けて捕まるなんて馬鹿みたいだからな」
「心配するな。今回は見逃してやるよ。ただし今回限りだかな」
「上等だ。そうでなくては面白くない」
この異常に早い心臓の動きは予測できない事でいろいろ起ったせいという事にしておこう。
泥棒が心を盗まれたなんて洒落にもならない。