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この手を離したくない

ふわりと広がる薄茶色の髪に手を伸ばす。
柔らかな感触を甲に触れさせながら、金鎖に絡まる細い髪を丁寧に解いていく。
くすぐったさに震えている彼女の細い肩と白いうなじ。

その儚げな風情が思い出させるのは、彼女とは好対照に力強い生命力の塊のようなアイツ。


昔、肩を組んだ時に当たった硬い髪は、チクチクと腕を刺して痛痒かった。
でも、その刺激ですらも愛おしかった。
そして、中学に入学する頃にはこのまま二人でいたいと望むようになっていた。
だから、この手を離した。離すしか、なかった。


考え込んでいた間も休ませることなく動かしていた手が捕われた髪を解放する。

「外れたぞ」
「ありがとう。お兄ちゃん」

彼女が軽く会釈をしながら礼を言う。大人びた従妹が見せる笑顔が眩しい。
俺が彼女のように柔らかな少女だったなら、アイツから離れなくてもよかったのに。
「帰ろう?」と差し出された手。小さなその手にゆっくりと重ねた俺のゴツイ手。
差し出された手がアイツのだったらいいのにと未練がましく思う。
もう、ただの友人に過ぎないのに。
親友という絆を手離し、望んだ関係へと踏み込むこともできなかったのだから。
離したくなかったその手は、遠く離れてしまったのだから。