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勘違い

会社のレセプションが終わった後、捨てられようとしていた花。
もったいないな、と思っていたら、「もし良かったら、花束にしましょうか」なんて
部下の女の子が言ってくれたため、ついつい貰ってしまった。
もちろん、あげる人間なんて、いやしない。
しょうがないから、家に持って帰るしかない。
もう日付も変わりそうな時間だから、家族は寝ているだろうが…。
バケツにでもつけておいたら、明日の朝には、母親が食卓にでも飾っていてくれるだろう。
そんなことを思いながら家に帰ったら、意外にもダイニングの明かりがついていた。
ダイニングの中心には、食卓でつっぷして寝ている兄貴がいる。
「兄貴、こんなところで寝てると、風邪ひくぞ」
花束を抱えたまま、兄貴を足で蹴り起こす。
兄貴は、むにゃむにゃと、漫画のような声をあげながら目を覚ます。目をこする。
しばらく観察していると、だいぶ頭がはっきりしてきたのか、俺の方を見た。
そして、花束を見て、目を輝かせた。
「お前、それ、もしかして!」
「ん? あぁ…これは」
「俺の誕生日プレゼント!? すげぇ! 持つべきものは、弟だなぁ!
 母さんも父さんも俺の誕生日忘れやがって…。悔しいから、お前のこと待ってて
 起きてたんだけど…起きてて良かったぁ! でも、お前、俺のプレゼントに花って!」
兄貴は、俺の手から花束を受け取り、小躍りしながら大騒ぎした。
誕生日? …そういえば、兄貴の誕生日って…今日だっけ。しまった、忘れてた。
しかし、良い方向で勘違いしている兄貴に、今更「もらい物」なんて言えるわけがない。
「覚えてるよ、兄貴の誕生日ぐらい。兄弟じゃんか」
「愛してるぞー、弟よっ!」
頭一つ分、俺より身長が低い兄貴が、俺の胸に飛び込んできた。あったかい。
ちょっとした罪悪感を胸に沈めながら、俺は兄貴を抱きしめた。
…明日、改めてプレゼント買ってくるから、今日のところは勘違いしててくれ。兄貴。