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涙も出てこない

黒い服を着て、黒いネクタイを締めて、黒い靴を履いて。全身真っ黒黒介の君が、
今、僕の前で泣いている。

あーあ。馬鹿だな。
誰がって、僕が。なんでバイクにはねられたくらいで死んじゃったんだろう。
君に会いにいくことしか、考えてなかったんだぜ。これから死ぬなんて思いもしてなかったのに。
ほんと、馬鹿だよ。
誰がって、君が。そんなに泣くもんじゃないよ。たかが大学時代の友達がひとり死んだだけなのに。
……いやさ、一応そういうことになってるんだからさ、そんな、ほら、恋人が死んじゃった
みたいな泣きかた、しちゃ駄目だってば。

ごめんね。なぐさめてあげたいんだけど、ほんとは。
いつもみたく、ふざけながら君に抱きついてさあ。「愛してる」なんて笑いながら言って
みちゃったりしてさあ。
だけど、ほんとに、本当に、ごめんね。ごめんね。
もう僕には、君を抱きしめるための腕も、君にささやくための声も、何もないんだ。

悲しいよ。僕だって、悲しい。
だけどごめんね。もう、空気と同じになってしまった僕の目からは、涙も出てこないんだ。