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ふんで

 同僚の鹿島が訪ねてきたのは、夜の12時をまわった頃だった。

「どうしたんだ…。その格好…」
「終電に乗ろうと思って走ったら、鳩のふんで滑って転んだ。終電も逃した」
「あらら」
「悪いが泊めてくれないか…?」
「水臭いな。どうぞ」
「すまん」

 俺の部屋は職場の近くで、時間ギリギリまで寝ていられるのが決め手の部屋だった。
 だが職場の近くであるが故に終電を逃した同僚がちょくちょく泊まりに来るようになっていた為、
睡眠時間に関しては前より減っている。

「お前がここに泊まりに来るのは初めてだな」
「いつも誰かが泊まっている状態の時もあっただろ。来れないよ」
「騒がなきゃいいよ」
 そういって俺はビニールに入ったスウェットや下着を鹿島に渡した。
「これ、サイズきついと思うけど新品だからさ」
「悪いな。今度同じもの買ってくるよ」
「慣れてるからいいって。風呂はいれば? 布団用意しとくから」
「いいよ、俺は床で」
「そういう訳にいかないの。上着こっちにかけとくぜ。軽く汚れ落として、明日朝一でクリーニングな
鳩のふんって落ちるよなあ?」

 聞こえてくる水音にいけないと思いつつも興奮する。
 さっき目に入った適度に筋肉がついた背中や、浅黒い肌の残像がちらつく。
 頭を振り、雑念を追い払う。仲のいい同僚の座は失う訳にいかないのだ。

 鹿島が風呂からあがってきた。
 仕事の事や、たまっていた不満など、意味があるようでないような会話が続き、
さすがに隣の部屋から抗議の打撃音が聞こえてきて寝ることにする。
 しばらくして、隣から規則正しい寝息が聞こえてきた。

 このまま、眠っていてくれたら。キスぐらいしても気がつかないかもしれない。
 でももし気がついたら? 酒でも飲めば良かった。そうしたら酒のせいに出来たのに。

「……俺、本当にここは使いたくなかったんだ。自信がなくて」
 隣から鹿島の声が聞こえた。
「清水、起きてる?」
「起きてるけど……」
「いいよな?」
「なにが……? え?」

 鹿島の体が俺にのしかかって来た。心臓の音が体を通じて響いてくる。
 噛み付くような口付け。鹿島の俺の体を貪る手が熱い。
触れ合った互いの体が動物みたいになっていく。

「俺のこと好きだろ?」
「か、鹿島は?」
「好きだ」
「……俺も」
「知ってる」

 甘い声が、荒々しい息遣いが、体がもみ合う音が、たぶん隣に聞こえてる。
 でももうそんなことどうでもいい。

 快感がすべてを壊していく。
 モラルなんて踏み越えていってしまえ。