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彼は案外子供っぽい

「なあ、もう行かないと映画始まるぞ」
って、無視かよ!

平日はもちろん、家族サービスや接待ゴルフで休日でもほとんど会えない俺らが
一月ぶりにデートしたってのに、映画までの暇つぶしに入ったゲームセンターで
あいつは、かれこれ小一時間はUFOキャッチャーの前にへばりついてやがる。

「おい、いい加減にしろ」
「あーー、あともうちょっとで取れたのに!」
ものすごい形相で睨まれた俺は、お前、年いくつだ?と内心ツッコミつつ溜息をついた。

それから三十分、ぬいぐるみを抱え満面の笑みの彼と、映画館に着いた頃には
お目当ての映画はほとんど終わっていた。
さて、どうしようとあたりの看板を見回していると、
「じゃあ、これ見ようよ」
と彼が指さしたのは。

し/ん/ちゃ/んですか!?
四十過ぎた男二人で、し/ん/ちゃ/ん。しかもそれ、先週家族で見たんですけど。

彼に押し切られしぶしぶ中に入ると、やはり家族連ればかりだった。
始まって数分で飽きた俺は、隣に座る彼を観察することにした。
話が進むにつれ、目をキラキラさせて周りのちびっ子よりはしゃぐ彼に、恥ずかしさを
感じつつ最後まで目が釘付けになっていた。
UFOキャッチャーに時間を取られ、し/ん/ちゃ/んを見ただけで食事もせずに
帰る羽目になった。
だがそれも悪くないと思えるほど、彼に惚れていることに我ながら笑えてくる。

分かれ道で、さっきまで大事そうに抱えていたぬいぐるみを突然投げてよこした。

「えっ…」
「明日は娘の誕生日だろ。どうせ君のことだから、何も用意してないと思ってね」
確かに百歩譲っても大の男が持つようなものじゃあなかった。

礼を言う前に、恥ずかしそうな笑顔で彼は手を振った。
俺は人がいないのを確かめると、その可愛らしいぬいぐるみを抱きしめキスをした。