ソーダシガレット

何気なく店に立ち寄り、安っぽい駄菓子を買った。
名前の分からないキャラクターの絵が印刷された、青い紙箱に入っている白いシガレット。
どうしてこのラムネのような駄菓子にシガレットという名が付いているのだろう。
どう見ても、煙草とは似ても似つかないじゃないか。

店を出て、シガレットをひとつ取り出した。
煙草を吸うような動作で、口にくわえてみる。
隣では、奴が俺に好奇の視線を向けている。
大の大人が駄菓子を遊びながら食べる光景は、さぞかし滑稽なのだろう。
自然と、自嘲の笑みが零れた。
そして、笑いに口元を歪めたせいで、くわえていたシガレットを落としてしまった。
落ちたシガレットを一瞥し、その場を立ち去ろうと足を踏み出す。
だが奴はシガレットを拾いあげ、あろう事か口に入れようとしていた。
慌てて奴の手からシガレットを叩き落とす俺に、奴は不満げに言った。
「3秒ルール。 子供のときによくやったろ?」
「・・・いい年をしてそんな事をするな」
そう言って、おれはシガレットを一本、奴に手渡した。

奴はシガレットをじっと見つめたまま、口に入れようとしない。
どうしたのかと思い声をかけようと口を開いた瞬間に俺の口の方にシガレットを突っ込まれるとは、誰が予測しただろうか。
さらにその後、まるでポッキーを食べる時のように片端を口に含むとは、誰が予測できただろうか。



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最終更新:2011年04月17日 03:44