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見た目怖面中身わんこ×見た目クール中身天然小悪魔

「何をやっている。かくれんぼか?」
聞き覚えのある低い声と一緒に、俺の頭上に傘が差し出された。
「…いや」
かくれんぼて。こんな雨の日に。ていうか確かに俺はコンビニの自販機と
ゴミ箱の間にちょうど店内からは影になるように座りこんではいたけど
通りからは丸見えだし。ていうか高校生にもなってかくれんぼは。
「そうか。おまえは、アイスは好きか?」
「え…はぁ、まあ…」
アイス?春だけど、まだ寒いのに…?
「だったらこれからうちに食べにくるといい。すぐそばだ。ちょうど今
 この店で売っているアイスを全種類一つづつ買ったところで…」
そう言ってその人は自分の手元を見た。傘しか持ってない。
「お客様ー、お買い上げになったものとお財布とトイレットペーパーをお忘れですよー」

そんなわけで、なぜか俺は学校の先生と相合い傘で歩いていた。
「先生、この辺に住んでたんスね」
「ああ。おまえはたしか、学校の反対側じゃなかったか。」
「…バイトが、近くで」
そう口にしたらまた、さっきまでのぐちゃぐちゃな気持ちが心をよぎる。
でも、雨をよけるために先生の体が俺に寄り添うように傾いているのを見てると、
なぜかだんだんそういう気持ちが消えていった。
この人のこと女子達がクールビューティーだなんて騒いでるが、
近くで見るとやっぱりかっこいいな。というか…きれいだ。
(でもクールは間違ってた。むしろアイスだった。)

「待て。」
「へ?」
「だから、おあずけだ。おまえ、アイス食べる前に……まったく…見せてみろ。」
気付いてたのか…。そっか、だから俺を部屋に呼んだんだ。
俺がこたつ布団の中から左腕を差し出すと、先生が俺のパーカーの袖を捲った。
手首からひじにかけてすりむけて生っぽい肉の表面に血がにじんでいる。
「…まず消毒だな。」
「げっ!い、いいよ、これ、ぜってー死ぬ程しみる!」
「がまんしろ。」
「…どうしたのかって、聞かないのか。」
「いや、聞くぞ。」
…わからない。何考えてるんだろうか、この人は。
「…バイトの先輩の一人がなんか、いきなり蹴り入れてきて…俺なんもしてねぇのに。
 でムカついて掴みかかったら他の先輩も来て…ぶっ飛ばされたときすりむいた…。」
先生は表情を変えずにもくもくと消毒液の用意をしている。
何考えてるんだろう。でもその淡々とした態度はなんだか俺を安心させる。
それで、つい話さなくていいことまで話してしまった。
「そのあと主任が来て、なんか…怒られたんだけど…
 俺が全部悪いみたいな言い方されて…生意気だから、とか…って
 …っっいいいいいっ!」
「暴れるな馬鹿。…これが終わったらアイスをやるから。」

昔から、俺がちょっとでかい声を出すと弟が怖がって泣いて、親に怒られた。
学校の先生も、やたら逃げ腰か、逆に威圧的かのどっちかだった。
でも、なんか、この人は…
「先生さ、俺のこと…恐くないの?」
思わずスルッと聞いてしまった。一番聞きたくないことを。

「恐い?…おまえが、か?」
初めて見た先生の笑顔は、見たこともないような優しい顔だった。