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王冠

親父の後姿に憧れて、昔2人で真似し合ったな。
手先が器用なお前が衣装を用意している間、俺が力に任せて護衛兵の刀を借りてきて。
見つかった時にはインクでひげも書いていた。
シーツのマントと床に引きずっている刀、それに白い紙の冠をかぶった小さな王様が2人。
怒ると思っていた親父が、俺たちを見比べてひげを撫で、唐突に笑い出したっけ。

でも、あの古い輝きを深めていくものは、この国にひとつしかない。
触れることもかぶることも、たった1人しか許されない。いくら双子と言えども。
あの笑い合えていた日々から、もうどれくらいの年月が経ったろうか。

金属特有のひやりとした感触が指から離れた。
そっと立ち上がると、すっかり馴染んだマントが微かな音を立てた。
濃紺の髪の上に金の冠を乗せたお前が、静かに顔を上げる。
伏し目がちだった瞳が、今は揺れながらも強い光を抱いて俺を見つめている。

頼む。わかってるだろうが、お前に頼む。
その器用さが、今この国、この輝きを頂く者に求められているんだ。
相変わらず俺には力しかない。だが、あの王冠とその主を守れるなら本望だ。
「…頼むぜ、次期国王」
「国王様、…ご武運を」