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本家の三男×分家の跡取り

いつもこっそり待ち合わせた、駅前のコンビニの裏。人気の無い、埃っぽいコンクリの
隙間に、ぶうんと空調の音が響く。今はもう、僕以外には誰も来ない。

決まってそこが、僕たち二人の待ち合わせ場所だった。
従兄弟で、親友で、そして生涯の伴侶を誓った。けど、それももうすぐ終わる。
もうじき、僕たちは十五になる。昔で言うなら元服の歳だ。
僕たちの家はむかし、えらい公家さんだったらしい。今でも大きな投資会社を
やっているから、十五になる長男は正式な「跡継ぎ」とする、という家法みたいな
ものがあった。
だけど僕たちは、僕は、まだ子どもで、そういうことを何一つ理解していなかった。
僕の家は本家で、かれの家は分家。僕は跡継ぎにならなくてすむ三男坊だけど、かれは
年の離れた妹が一人だけ。
それが意味することもまた、僕は全然分かっていなかった。

「どこか遠くの町に行こうよ。全部捨てちゃえよ」
「……駄目だよ。お前には分からないだろうけどね、おれにはとても大切なものなんだ」
「そんなの分からないよ! おれが大事なのはトシちゃんだけだよ!」
「うん。おれもお前のこと大事だ。でも、父さんとか母さんとかも、おれのことすごく一生懸命に
考えてくれてる。大事だって、思ってくれてる。あの人たちの期待を裏切ることはできないよ」
「だけど、約束したじゃん! 一緒にいるって、約束したじゃん!」
「ごめん。ごめんな。行けないよ。おれ、弱虫だから」

そう言って笑った顔が少し寂しそうだったことは、今でもまだ覚えている。
次の日かれは家族と電車に乗って、分家のある遠い県へと引っ越していってしまった。
始めから決まっていたことだった。同じ町で暮らせるのは、十五になるまでの短い間だけ。
分かっていたけど、ちっとも解っていなかった。それを思い知った。