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トーテムポール

「見て見て!これトーテムポールみたいじゃね?」

お前、大学生にもなってなにやってんの?
正月早々、暇だからって遊びに来てさぁ。
親戚来るって言っといただろ?
1歳の姪を抱っこして、幼稚園の従弟を頭の上に乗せて、中学生の弟肩車してさ。
しかも酔っ払いの親父が姪の下に参加しやがった。
顔縦に並べてんじゃねぇよ。
俺の血縁関係のツラが縦に並んでる中でお前かなり浮いてるし。
つーかトーテムポールって神様だかご先祖様うんぬんじゃなかったっけ?
酒臭そうなオッサンの顔とぐずりかけてる赤ちゃんと鬱陶しい笑顔と俺と激似の馬鹿面でできたトーテムポールとかありがたみもクソもねえ。
あんまりにもバカバカしかったから、吐き捨てるように言ってやった。
「正月につまんねえ事してんじゃねー」
気色悪いトーテムポールに背を向けて、コップに入った酒を舐める。

突然、姪の泣き声がリビングいっぱいに響き渡って、親父と従弟のあやす声が重なって聞こえてきて、弟が姉ちゃんを呼ぶ声と同時にドアの開く音。
3つの足音が少し遠くに行って、姪の泣き声が閉まったドアのむこうに消えた。

「すねてんの?」
つけっぱなしのテレビから聞こえてくる正月特番の、なんとかっていう若手芸人の漫才に混じって、耳に入ってきた声。
こいつ、何でこんなに頭が悪いんだ。

「…別に」
「妬いてんの?」
「別に」
「寂しかった?」
「別に」
「あーあ、残念。さすがに親戚関係に嫉妬は無理か」その言葉と同時に俺の背中に、よく知ってる体温が服越しに伝わってきた。
何してんだよ。
ここ俺の家。
親戚いんだぞ。
ドアのむこうからじゃ分からないように、テレビの雑音に消されるぐらいの声で喋ってたのにさあ。
そんなにべったりくっついてきて、見られたらどうすんだ。
小声で文句を言ってたら、耳元で小さく小さく囁かれた。
「今からさ、俺と2人だけでトーテムポールの真似しない?」

ベッドの上で。

ご丁寧に付け加えられた言葉に肘鉄1発。
「暑い」
とりあえず最後の文句を言ってから、自室へ足を運ぶ。
ジャケットのポケットに財布と携帯を突っ込んで、メモ用紙に走り書き。
汚い字の並んだメモ用紙をリビングに置くついでに、バカを1匹掴み上げる。



北風に曝された瞬間、隣のバカがゲラゲラ笑いだして「“トーテムポール見に行ってくる”って、お前エロい」とか言ってくるから「てめえ覚悟しろよ」と返した。
なんとなくこいつの回りくどい誘いにただ乗るだけなのが悔しいような気がして、軽く仕返しに一言。

「で、トーテムポールはどっちが上になるんだ?」
途端に消えた五月蝿い笑い声。
お前のアパートまでの道中せいぜい悩め、バーカ。