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ちょ、痛いって

たとえば部屋で寛いでいるとき、二人で眠る前、情事の後なんか。そんなときにあいつは俺の体に噛みついてくる。コンプレックスだった白い肌に目立つ赤い歯形が独占欲の証のように増えていく。
俺はいつも、かすかな痛みと心地良さ、あいつに愛されているだろう事実がもたらす優越感に溺れてしまう。被虐嗜好があるわけでもないけれど、ほんの僅かな間残る跡は見るたび痛みと快感がつのった。
今日もあいつは俺を噛んだ。痛みと歯形が残る程度に、しかし傷にはならない強さで。
「ちょ、痛いって」
「いいじゃん。血だって出てないし、すぐ消えるよ」
そう言ってまた、肩やうなじや指や脇腹に噛み付くのだ。その控えめな歯形が消えるのを、どこか惜しく思いながら見ていた。
いっそ一生ものの跡がついてしまえば、あいつは俺から離れがたくなるんじゃないかなんて、浅ましいけれど、思わずにはいられなかった。