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友人だけど主従

「お前なあ、もう少し危機感持てよ…」
「んー?なんで?」
「なんでって…今どんな状況だか分かってるのか?」
「分かってるよ~。信頼してた家臣の謀反にあって、お城の周りを取り囲まれてる、でしょ?」
「そうだよ!そう!分かってるなら、なんでそんなお気楽なんだよ!」
「お気楽ってひどいな~。俺はいつでも真剣だよ?」
「どこがだ!真剣な奴はこんな状況で一人ファッションショーなんてしないだろ!」
「え~、いいじゃない。ねえ、これとこれどっちが似合う?」
「知らん!というかお前それ俺の服じゃないかよ!」
「バレた~?王子様の服ってずっと着てみたかったんだよね~。ふふ、変な服~」
「うるさい!お前ほんとにどうしたんだよこんな時に…」
「こんな時だからでしょ~。ねえ、俺たち最初に会った時のこと覚えてる?」
「え?…ああ、まあ…。庭に忍び込んだお前が俺に話しかけてきたんだろ」
「そうそう、覚えてるんだね~!君は下らないことは覚えてないタイプだと思ってたよ!」
「く、下らないなんて思ってない!…お前が話しかけてくれて…俺は嬉しかったよ…」
「…俺も。…俺も、あの時話しかけて良かったと思ってる」
「なんだよいきなり…恥ずかしい奴だな」
「ううん、別に~。ねえ、ところでさ、このお城って地下に外に通じる逃げ道があるの知ってた?」
「え!?なんだよそれ!俺聞いたことないぞ!」
「うん、王様がねえ、秘密だぞって教えてくれたんだよね~。ほら、地図に○がつけてあるでしょ?」
「知らなかった…!そんな道があるなら早く逃げるぞ!他の者たちも連れて…」
「そうだね~。じゃあ俺が他の人たちを連れてくるから、先に行っててよ」
「え?でも皆で一緒に…」
「だめだよ~君、走るのすごく遅いじゃん!皆と一緒だったら置いてかれちゃうよ?」
「おいうるさいぞ!…まあ確かに俺は足が遅いが…」
「分かってるならほら、先に行って!あまり遅かったら俺も置いてっちゃうよ!」
「うう、くそ…。じゃあ先に行ってるからな!必ず追いつけよ!」
「うん、人の心配してないで頑張って走るんだよ~」
「ああもう危機感のない奴め!」


どたどたと寝巻のまま駆けていく彼の後姿を見つめて、俺はふっと微笑む。
これが多分、彼を見る最後の姿。
君に伝えたい思いはいくつもあるけど、俺はそんなに器用じゃない。
ごめんね、君の悲しむ顔は絶対に見たくないんだ。

広場を見渡せる窓を開け放つと、眼下に広がるのは反旗を翻した無数の兵たち。
必死に平和を築いてきたこの城を、敵と見なして陥落させようとする民衆たち。
「お前たちの敵はここにいるぞ!」
思い切りそう叫ぶと「王子」の姿に気付いた者たちからいくつもの怒号が浴びせられる。
背格好の似ている俺は今、顔以外は近くから見ても完璧に王子に見えることだろう。
…あとどのくらいで奴らはここまでたどり着くだろう。
それまでにあの足の遅い王子…いや、俺の一番大事な友達は、どこまで逃げられるだろうか。
暖炉で赤々と燃える炭を一つ火ばさみで掴みながら、俺はぼんやりとそんなことを考えた。