痛みを愛する
きゃっきゃっと甲高い耳障りな声が聞こえる。
痛い。
公共の場で人目も憚らずはしゃぐカップルも、それを羨ましいと思ってしまう自分も。
羨ましいと思うなら、彼女を作ればいい。そんなことぐらい分かってる。
でも、あいつがまだ俺のことを甘ったるい声で呼ぶから、いつまで経っても俺はあいつに囚われたままなんだ。
心の中でたかし、とあいつを呼べば、あいつは蕩けるような笑顔でなんだよ、と返してくれる。
痛い。
いつまでも過去のことを引きずって、男らしくない。
痛い。痛い。痛い。
痛いと言っておきながら、痛みから抜け出そうとしない自分が。
でも、やっぱり俺はこの痛みを忘れる気はない。
絶対に、忘れたくない。
だって、この痛みは確かにあいつを愛してた証だから。
この痛みを忘れないうちは、あいつを愛していられるから。
最終更新:2010年08月23日 14:05